2019年02月01日 1561号

【議会を変える・市民と変える/救護施設に向き合い共生社会をめざす/向日市議会議員 杉谷伸夫】

 今、京都市のある施設の設置を巡り、向日市民の間に大きな不安と憤りの声がおこっています。その施設とは「救護施設」です。生活保護法に基づく施設で、様々な事情で経済的な支援だけでは自立した生活が困難で、他の制度では支援できない制度の狭間にいる方々のための最後のセーフティーネットの施設です。入所者には精神障がいをお持ちの方が多く、「ホームレスや刑務所出所者なども含まれる」と報道され、不安の声が噴出。先日の住民説明会には5百人を超える住民が詰めかけました。

 こう聞くと「なんだ迷惑施設反対運動か」と思われるでしょうが、そう単純な問題ではありません。京都市はこの施設の設置運営事業者を昨年8月上旬に決定しながら、向日市民への説明会は11月下旬。着工予定のわずか1週間前でした(当面は着工しないと言明)。市民にとっては寝耳に水の話です。

 さらに建設予定場所は京都市とはいえ、名神高速道路と国道で分断されてまるで飛び地のよう。まったく向日市というべき場所です。京都市側へ渡ることは難しく、最寄り駅も「西向日駅」で、入所者の生活圏域はほぼ完全に向日市です。

 そのうえ新幹線と高速道路に挟まれ振動と騒音が激しい場所であり、居住環境としては「最悪」と言える場所です。精神障がいなどを抱えた方々が多く入所するというのに、とてもふさわしい環境とは思えません。「なぜこんな場所を選んだのか」―説明会でも質問が続出しました。

 この救護施設問題は、本来は「不安なものは来て欲しくない」と排除するのではなく、地域社会がどう受け入れていくかを皆で議論する必要があります。しかし多くの向日市民が、京都市から一方的に「押しつけられた」と感じている現状で、そのような議論を始めることが難しくなっています。

 市民にとって救護施設はなじみのない施設なので、不安の原因となっています。向日市議会は京都市や事業者に説明を求める意見書を提出しました。ですが、京都市の施設であるため、向日市には何の権限もありません。一方で現実の最大の当事者は向日市民であり、入所者です。向日市の地域社会の中で共存していくわけです。今後数十年にわたる地域との間の課題を、京都市は施設事業者と向日市に丸投げしているといえます。これが地方自治の正常な姿だとは思えません。

 このような状況で、市民の声に応えながら、どう共生社会をめざすのかという課題に今向き合っているところです。
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