2019年02月08日 1562号

【沖縄県民投票実施に焦る安倍政権/土砂投入 違法工事を拡大】

うそを暴く運動を

 安倍政権の沖縄県民投票つぶしは失敗に終わった。不参加を表明していた5市長は実施を受け入れた。「『賛成』『反対』の選択肢だけでは複雑な県民感情が表せない」と県民投票条例自体にケチをつけていたが、「どちらでもない」との選択肢を加える条例改正案を自民党沖縄県連は飲まざるを得なくなった(条例改正1月29日)。県全体での投票に大きく前進した。

 いかに自民党中央からの圧力があろうとも「投票の機会を奪うな」という主権者の要求に背を向けることはできなくなったのだ。5市にとどまらぬ「全県民の投票」を求める市民の闘いの勝利だ。

 だが、安倍政権は県民投票つぶしをあきらめたわけではない。「どちらでもない」との選択は工事続行を意味する。市民の次なる闘いは、賛否の議論をまき起こし、確固たる「反対」票を広げることだ。安倍政権は、「辺野古移設が普天間基地返還の唯一の方法」など数々のウソをばらまいている。その一つ一つを検証することが、県民投票のもう一つの意義でもある。県民投票条例(11条)は知事に対し、「客観的かつ中立的な広報活動、情報の提供」を求めている。ウソや脅し、利益誘導に惑わされず、自由に意志表示ができる環境こそ民主主義の土台なのだ。

居直りの暴走工事

 安倍は投票つぶしの仕掛けとともに、辺野古への土砂投入を加速させようと企んでいる。沖縄防衛局は1月21日、現在土砂投入している工区(約6・3ヘクタール)に加え、3月25日には隣接する新たな工区(約33ヘクタール)にも土砂投入を始めると県に通知した。両工区を合わせると、全体面積(約160ヘクタール)の4分の1に及ぶ。

 そのためだろう。新たにN4およびK8護岸の建設を始めた。この護岸建設は埋め立て土砂の仕切りのためではない。土砂運搬船・台船の桟橋にするためだ。県は「護岸の桟橋転用は違法行為」と、現在陸揚げ場に使っている北端K9護岸に対し指摘してきた。国は法を守ろうという意志は全くない。

 さらに問題なのは、K8護岸はC1護岸につながる。C1は超軟弱地盤上にあり、設計変更が必至だ。K8護岸も変更の可能性がある。また保護が必要なサンゴ群50mまで近づき工事をすることになる。沖縄防衛局は「影響ない」と言い切り、保護措置を取らない。公有水面埋立法の承認を受ける際の環境保全措置などの留意事項をことごとく無視。違法工事がさらに拡大する。

 安倍政権は7月の参議院選挙をにらんでいる。台風時期が到来するまでに、なりふり構わず土砂を運ぶつもりだ。「陸地」を広げ、「後戻りできない状況」を見せつけようとしている。県民がどのような投票結果を示そうが、公然と踏みにじろうというのだ。

 

全世界から沖縄連帯

 なぜ、こんな違法工事が堂々と続けられるのか。県は昨年8月、工事を認めない(承認撤回)措置をとった。それを国土交通相が「執行停止」の仮処分を行ったからだ。県は11月29日、「違法な国の関与である」と国地方係争処理委員会(係争委)に審査を申し出ている。係争委は1月21日、3回目の審議を行ったが、結論を出すに至っていない。

 委員5人の顔触れを見ると、委員長は公害等調整委員会顧問の肩書がある富越和厚(とみこしかずひろ)。元東京高裁長官の経歴を持つ。委員長代理は小幡純子上智大学法科大学院教授、他に法学者などが名を連ねる。係争委は総務省所管の第三者機関であり、どれだけ政府から独立した公正な判断ができるか、市民による厳しい監視が不可欠だ。

 安倍政権の県民投票つぶしを跳ね返した市民の力は高まっている。防衛省は軟弱地盤の存在を認め設計変更を口にせざるを得なくなったが、「承認しない」との知事の決意は固い。ホワイトハウスに向けた署名は20万9千筆を超えた。沖縄との連帯を全国に、世界に広げることが、新基地を阻止し、安倍政権を追い詰める力になる。

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