2019年02月08日 1562号

【大阪都構想諦めぬ「維新」/カジノとセットの大阪万博/大規模開発は市民生活切り捨て】

 大阪の亡霊「大阪都構想」がうごめきだした。昨年11月の大阪万博開催決定を契機に、大阪維新の会(代表・松井一郎大阪府知事)が住民投票実施強行をもくろんでいる。都構想の狙いは府市統合で生み出す財源を万博・カジノが象徴する大規模開発に投入することだ。結果、市民生活は切り縮められる。亡霊を亡霊のまま葬り去ろう。
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混乱する市議会

 大阪都構想は、大都市として都道府県並みの権限を持つ大阪市を解体し、東京都と同じく特別区に再編、大阪府の下部組織に置こうというもの。大阪市の財源(2018年度当初一般会計・特別会計合計で3兆8985億円)を大阪府(同3兆9437億円)に召し上げ、「効率的に」公共投資に充てることを狙う。

 都構想は15年5月17日、市を5つの特別区に再編する案がすでに住民投票で否定され、市長であった橋下徹大阪維新の会代表(当時)が政界を引退し、決着がついている。

 しかしその後、知事・市長ダブル選挙で維新候補が当選。現松井一郎知事が都構想住民投票再チャレンジの公約が支持された≠ニ強弁し、同じく橋下の後釜として座った吉村洋文市長とともに4分割案を作り、再浮上させた。

 市を解体するには市民投票で過半数の賛成を得なければならない。市議会に示す原案を審議する法定協議会は、市民投票のスケジュールありきで強引な運営をはかる維新と「ていねいな議論」を求める他会派が対立している。

 しびれを切らした松井知事・吉村市長は、18年11月に決まった「大阪万博開催」を「府と市が一体となって招致活動を展開した成果」と吹聴し、3度目の知事・市長ダブル選挙をちらつかせながら市議会野党に議論に乗るよう迫っているが、法定協議会は対立したまま動かない。

「風呂敷を広げすぎた」

 都構想の本質がむき出しになっているのが、大阪万博をめぐる動きだ。

 大阪万博の会場となる人工島「夢洲(ゆめしま)」は、80年代のバブル時代に、大阪湾岸開発として打ち出されたが、バブル崩壊で負の遺産と化した。その後も、コンテナ集積基地だとか新産業誘致だとか開発目的がころころ変わったが、何一つ実を結ばない。その負の遺産を「夢の島にする」と、維新はカジノを含むIR(統合型リゾート)誘致に奔走した。そして、大阪万博とセットで「関西経済の起爆剤」と位置付けた。だが、夢洲は建設残土や浚渫(しゅんせつ)土砂、廃棄物も受け入れている埋め立て地だけに、汚染物質が発覚した東京・豊洲市場の二の舞になりかねない。

 大阪万博の会場建設費は1250億円、運営費820億円との試算が提示されている(1/5産経)。2800万人の来場者を想定しているが、鉄道はなく、道路は橋とトンネルが各一本。まったく一からの開発だ。大阪市は、この春に民営化した大阪メトロの延伸を実施する。事業費は540億円が必要だ。松井はIRに進出するカジノ運営者に200億円の負担を求めるとするが、IR法で国内最大限3か所に限られた「IR事業地域」に指定される保証はない。松井は「風呂敷を広げすぎるぐらい広げた」と政財界の支援を求め、関経連も経団連へ「救い」を求めた。

 一方で、万博・IRとリンクした開発計画の具体化は暴走を始めている。大阪メトロは、夢洲延伸に合わせホテル、オフィス、商業施設が入居する高層ビル構想を発表した。また、都構想実現を想定し、すでに始まっている大阪市内の開発計画とのリンクも取りざたされている。

 巨額の開発費のめどを立てぬまま、資本の皮算用だけが先行している。

市民は疑念と批判

 百億円、千億円単位の巨大開発構想が飛び交うが、市民生活は置き去りだ。

 大阪市は相変わらず生活保護率全国一。全国学力テストで政令指定都市20市中2年連続最下位で、「貧困の連鎖」も危惧されている。だが、吉村は教員に責任をなすりつけ、学力テストの結果を給料に反映させると言い放ち、生活保護利用者へは医療費自己負担や生活扶助の現物支給を主張している。

 15年の市民投票で、都構想への反対票が多い区は、生活困窮者が多い地域と重なった。都構想はゼネコンやグローバル資本を潤すだけで、市民生活は潤うどころか一層苦境に追い込まれるものであることを市民はわかっている。

 カジノ誘致には、ギャンブル依存症や治安悪化の懸念から市民は反対が多数。「博打場つくって負けた人の金を当て込む経済活性なんて間違っている」「万博に予算を振り向ける代わりにどこかが削られて、それはたいてい福祉や教育から。弱い立場の人が守られない」と批判の声も上がる(11/30東京新聞)。

 大規模開発頼みの経済対策はすでに市民に見限られている。

 統一地方選は「維新」を退場させ、都構想に今度こそ止めを刺し、大阪府政・大阪市政を市民の手に取り戻す絶好の機会だ。

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