2019年02月08日 1562号

【ドクター林のなんでも診察室】

 今年もまるで「インフルエンザ産業」の宣伝と思われる「ニュース」や「解説」が垂れ流されています。塩野義製薬が昨年発売した「ゾフルーザ」がよく登場しています。医者への宣伝はより強力で、タミフルに代わって2位の売り上げ130億円が予測されています。

 効果はタミフルと同様とされているのに、1回のインフルエンザ当たり、タミフルの後発品は1360円で、この新薬は4789円。一回飲めばよく、インフルエンザウイルスを早期に撃退するといいますが、患者には本当に良いのでしょうか?

 販売認可のための審査資料では、効果を示す主な指標が咳や倦怠感などの色々な症状を混合し、ごまかしのきく「罹患時間」を使っています。今最も使われているイナビルという薬(4279円)も、「罹患時間」を使って、日本での試験ではとても「効いた」のですが、アメリカでの試験では全く効果なく、欧米では認可されていません。ゾフルーザも同様の可能性があります。

 亀田総合病院(千葉県鴨川市)という有名な病院が使用を見合わせたと業界では大きな話題になりました。高額な上に、この薬に強いウイルス(耐性)が急速に出現する率が大変高く、副作用も今後多発するかも知れないからです。同病院の専門家自身はタミフルなどもほとんど使わないとのことです。

 これは当然のことなのです。私たちが2009年に抗インフルエンザ薬が入院も肺炎なども防げないことを指摘して以後、それらの薬の効果が無いことがコクラン共同計画という世界的研究で証明されました。その結果、WHO(世界保健機構)は、「重症の病人の重症のインフルエンザ」のみに限定し、日本小児科学会でさえ普通のインフルエンザには使用を勧めないとの見解をだしています。

 少し早く治るかもしれない代わりに、吐いたり、走り出したり、叫ぶなどが増加、極めてまれとはいえ突然の死亡。厚労省は、これらのリスクを明記し、部屋に鍵をかけて見守るように、との通達さえだしています。

 日本では当たり前のように使われている「抗インフルエンザ薬」は不要なのです。NPO医療ビジランスセンターの浜六郎氏によれば、日本の人口当たり使用量はイタリア・イギリスの1000倍です。今年も400億円近くが製薬企業の利益のために使われます。こんなお金は、削られっぱなしの介護保険や生活保護、医師などの増員に向けるべきです。

 今後、抗インフルエンザ薬は断ってください。「じゃー、どうするの?」ですが、頭や節々が痛い時などには極めて安全・安価で効果的な鎮痛解熱剤「アセトアミノフェン」という成分だけの薬が薬局でも手に入ります。(筆者は、小児科医)
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