2019年02月08日 1562号

【大阪市ひげ裁判勝訴/維新市政の職員支配を断罪】

 1月16日、「勝ったぞ!」の声とともに、『地下鉄運転士へのひげ禁止は違法』の垂れ幕が、大阪地方裁判所前に翻った。

 ひげを剃ることを拒否したことで不当な人事評価を受けたのは違法だとして、大阪市営地下鉄(現大阪メトロ)の運転士だった男性2人が市に対し慰謝料などを求めた訴訟で、大阪地裁は計44万円の支払いを命じた。

 原告は、不当評価の元となった「職員の身だしなみ基準」が個人の尊重や幸福追求権を定めた憲法13条に反すると主張。市側は、他の鉄道会社にも同様の規定があるなどと反論していた。

 判決は、基準について「一定の合理性がある」とする一方、ひげを一律に禁止することや人事評価の理由にすることは服務規律の限度を超えると指摘。地下鉄の運行にも支障がないとして、「ひげを生やすかどうかは個人の自由」とした。

 提訴から約3年。判決を聞いた原告は「訴訟を起こしてからも、大きなミスや事故も起こしていないのに、ずっと低評価をつけられている。この判決を真摯に受けとめて、公正な評価をしていただけることを望みます」と語った。

 ことの発端は、2012年に橋下徹前市長が、5%の職員を必ず5段階の最下位とする相対評価制度を導入したことにある。これにならって、藤本昌信交通局長(当時)が運輸部に問題の「職員の身だしなみ基準」をつくった。

 この基準に違反したことを理由に2人は、13年度及び14年度の人事考課で低評価を受けた。橋下は、2年続けて最下位となった職員を「分限処分」にできる職員基本条例も制定している。原告の1人は、「分限免職」もあり得る状況に追い込まれていた。

 判決後、吉村洋文市長は「身だしなみ基準を定め、そのルール自体が合法なのに(判決)守らなくていいなんて理屈通らない」とツイートしたが、判決文は、「2人への人事考課の内容は人格的な利益を侵害するもので違法と評価するのが相当である」と断じている。ルール違反者の評価は低くても当然だという市長は、「ルール」を口実にした人権侵害であったことを謝罪する気などさらさらない。

 職員支配システムを導入した張本人、橋下は「当時は厳格に服務規律を守らせることが第一だった」と、管理強化を正当化するツイートを乱発している。だが、16年、すでに大阪弁護士会が人権侵害にあたるとして、ひげにかかる規定の廃止と人事考課制度におけるマイナス評価の取り扱いをやめるように勧告している。このことが、司法の場において決着したということである。

 職員アンケート調査や「入れ墨調査」など、人権侵害を続けてきた橋下−吉村“維新”市政に対して、当然の判断が下されたのだ。

 原告は大阪市と大阪メトロに対して、非を認めてこの判決に従い、控訴しないことを要請していたが、市は1月30日、大阪高裁に控訴した。原告は引き続き闘う決意だ。

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