2019年02月15日 1563号

【ミリタリー/INF全廃条約破棄するトランプ/核廃絶・軍縮は全世界の意向】

軍縮進めたINF条約

 トランプ米大統領は2月1日、中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱すると表明。翌2日正式通告した。条約は6カ月後失効する。この暴挙に対し、広島県被団協の坪井直理事長は「私たち被爆者が求める核廃絶とは全く別の方向へ向かうものだ。さらなる核増強と核拡散を招き、失望と怒りを禁じ得ない」と抗議した。

 すでに、米トランプ政権は1月17日、2010年以来9年ぶりとなる「ミサイル防衛見直し(MDR)」を発表。「宇宙は新たな戦場だ」と強調し、トランプ版「スターウォーズ計画」をぶち上げている。新たな核軍拡への暴走であることは疑いない。

 87年12月に発効したINF全廃条約は、射程500〜5500キロbの地上発射型ミサイルの開発・実験・保有を禁じ、核だけでなく通常弾頭も禁止対象にした軍縮措置である。この条約を機に欧州では劇的に軍縮が進展し、欧州各国の軍備は30年間でほぼ3分の1までに削減された。

 軍縮へ大きく貢献してきたINF全廃条約を消滅させようとする米国のこの間の動きは人類に対する犯罪であり、到底許すことできない。

 だが、米トランプ政権のこんな身勝手な振舞は孤立せざるを得ない。NATO(北大西洋条約機構)は建前上、米国を「全面支持」としたが本音は違う。欧州でもアジアでも、米国のほとんどの同盟国はこの条約を支持してきた。条約が無効になりINFによる威嚇競争が再燃すれば、そのミサイルの配備先は自らの国土になるからだ。事実、NATOのストルテンベルグ事務総長は「NATOは欧州に新たな地上発射型の核兵器を配備する意図はない」として、米国が開発をめざす新型ミサイルの配備を受け入れない姿勢を改めて強調している。

 さらに、核軍縮と廃絶への道に背を向け続ける米露中など核兵器保有国への圧力が大きく高まっていることだ。

核関連企業に融資禁止

 日本政府は核兵器禁止条約に極めて冷淡だが、りそなホールディングス(HD)は核兵器を開発・製造・所持する企業に対して融資を行わない方針を定め、公表した。核兵器製造を使途とする融資を禁止するだけでなく、それ以外の目的であっても該当企業には一切の融資を行わないと宣言したのだ。米国のボーイング社(大陸間弾道ミサイルを使用可能な状態に維持)、ハネウェル・インターナショナル(核兵器の部品を多く製造する施設を運営)、ロッキード・マーチン社(核ミサイルを建造)、欧州のエアバス(潜水艦発射核ミサイルを製造、管理)、英国のBAEシステムズ(英仏米の核兵器計画に関与)などが該当する。

 核兵器禁止条約の「発効を先取りし、条約違反に問われるリスクを減らそうとする」こうした動きは、世界で大きく広がりつつある。 核兵器製造企業などへの融資禁止を掲げる金融機関はすでに70社近くになっている。世界では各国政府の核兵器禁止条約への評価に関わらず、条約に対する支持と期待が確実に広まっている。

 トランプ政権をはじめ中露など核兵器保有国の核軍縮への不誠実な対応と核軍拡への暴走に対して今こそ「核兵器禁止条約に参加せよ」の声を各国政府に突きつけ、強める時だ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS