2019年02月15日 1563号

【森友事件は終わっていない/発覚から2年、市民が「地元」で集会/近畿財務局OB、元NHK記者が訴え】

 学校法人・森友学園への国有地格安売却問題が発覚して2年。市民団体「森友学園問題を考える会」が2月2日、大阪府豊中市内で集会を開いた。対談企画のスピーカーとして、財務省近畿財務局の元職員や森友事件でスクープを連発した元NHK記者が登壇。「事件の真相究明がなされないままの幕引きを許してはならない」と訴えた。

行政が歪められた

 豊中市南部の国有地が破格の安値(鑑定価格から8億円の値引き)で森友学園に売却された。学園はこの土地に、安倍晋三首相の昭恵夫人が名誉校長を務める「日本で唯一の神道小学校」を開設しようとしていた。「地元」で行われたこの日の集会には会場満杯の約500人が参加。問題が「風化」していないことを安倍政権に見せつけた。

 集会1部の対談にのぞんだのは、近畿財務局元職員の伊藤邦夫さん(76)と喜多徹信さん(70)。伊藤さんは、近畿財務局職員が公文書改ざんを苦にして自殺したことに触れ、「私たちの仲間が死に追い込まれたことに衝撃を受けた。昭恵夫人がのめりこんだ森友学園を優遇するために行政が歪められた。文書改ざんはこの問題が政治案件であることのあかしだ」と訴えた。

 国有財産鑑定の仕事をしていた喜多さんは、一連の土地取引の特異性を強調。「籠池泰典理事長(当時)が昭恵夫人との記念写真を近畿財務局に見せたことが発端だ。後輩たちは『安倍案件』『昭恵案件』と呼んでいたようだ」と明かした。そして「市民が追及しなければ、『教育勅語』を子どもたちに唱和させる小学校が作られていた」と述べ、おかしなことはおかしいと市民が声を上げることの大切さを強調した。

国と大阪府の事件だ

 集会2部では、木村真・豊中市会議員と元NHK大阪記者の相澤冬樹さん(現・大阪日日新聞論説委員・記者)が対談を行った。

 木村市議は2017年2月8日、森友学園に売却された国有地の金額について「情報公開請求をしたのに非開示は不当だ」と国を訴えた。その記者会見がNHKで報道されたことが森友事件が世に出た最初である。司法担当記者として会見を取材した相澤さんが放送原稿を書いた。

 だが、オンエアでは「名誉校長は首相夫人」という肝心な部分がぼかされた。しかも「全国ニュースにすべきだ」という相澤さんの進言は退けられ、関西ローカルでの放送にとどまった。その後、相澤さんは森友事件で特ダネ報道を連発したが、昨年5月「記者を外す」という不可解な人事異動内示を受け、NHKを去る。記者を続けるためだ。

 「リークは大嫌い。権力にとって都合の悪い情報を“聞き出して”こそ、プロの記者の価値があるというもの。記者の仕事は社会正義の実現を最終目標にしないと存在意義がない」と相澤さん。森友事件については「本当は国と大阪府の事件だ。森友学園にあの小学校を作らせるために、行政のルールがねじ曲げられた。謎は未解決。取材して真相を明らかにする」

 木村市議は「役人が忖度だけでこれほどの無理をするわけがない。しかるべき人物にしかるべき責任をとらせねばならない」と述べ、安倍政権および維新府政に対する責任追及を力説した。

裁判闘争も大詰め

 森友学園への国有地不当売却国家賠償請求訴訟が大詰めを迎えている。

 11月に行われた第11回口頭弁論では、森友学園との交渉にあたった実務責任者だった近畿財務局職員への証人尋問が、「心身不調のため、出廷できない」(国側代理人)との理由で実現しなかった。事実上の証言拒否の可能性が高く、「心身不調」が事実なら、またしても現場に犠牲が及んだことになる。

 原告代理人の大川一夫弁護士は「どこもかしこもデータ捏造、改ざんだらけ。トップが嘘をつくからだ。そんな日本でいいのか」と述べ、裁判への支援を呼びかけた。次の口頭弁論は2月19日午後11時、大阪地裁202号法廷。最終弁論となる予定だ。
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