2019年02月22日 1564号

【沖縄新基地はつくれない/展望ない軟弱地盤対策/県民投票で圧倒的反対票を】

認めた変更申請提出

 沖縄・辺野古の新基地建設工事をめぐり、安倍晋三首相は埋め立て予定海域の大浦湾側に軟弱地盤があることをついに認めた(1/30衆院本会議)。「地盤改良工事が必要」と述べ、翌日の参院本会議では「県に対して変更承認申請を行う必要があるため、まずは沖縄防衛局で必要な検討を行っていく」と明言。政府として初めて、軟弱地盤の改良工事のために設計変更申請をすると述べた。

 軟弱地盤の存在は、大浦湾側の護岸工事のために防衛省沖縄防衛局が行ったボーリング調査報告書に明記されており、土木技師で沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんが情報公開制度を使って突き止めていた。この問題を市民団体や野党が何度も防衛省交渉や国会で追及してきたが、政府はなかなか認めようとはしなかった。それが今回、安倍首相自ら認めざるを得なくなったのだ。

 政府が正式に軟弱地盤の存在を認めたことを受け、玉城デニー知事は31日、「まさにわれわれが埋め立て承認撤回の事由に挙げていた軟弱地盤の存在を国が認めた。政府は即刻工事を中止して県と協議するべきだ」と訴え、「変更承認申請には応じない」と会見の場で明言した。

行き詰まる対策工法

 政府・防衛省が言う「地盤の改良工事」とは、金属製パイプに砂を流し込み軟弱地盤の中に砂の杭を作る方法だ。埋め立て部分は、地盤の液状化をふせぐため砂杭で水分を抜く「サンドドレーン工法」と呼ばれる方法が、護岸の基礎部分は軟弱地盤に締め固めた砂杭を大量に打ち込んで密度を高め地盤を強化する「サンドコンパクションパイル(SCP)工法」が検討されている。

 このSCP工法には砂の量を減らすために金属の精製過程で発生する廃棄物「スラグ」を混ぜることも考えていると言う。スラグが使用されれば、海に溶け出し水質が変化する。サンゴの死滅が懸念されている。辺野古・大浦湾だけではない。沖縄島東海岸全域にまで環境に重大な悪影響を及ぼすことは間違いない。

 地盤改良が必要となる面積は約65f、必要となる砂杭の数はなんと7万6699本にものぼる。新たな問題も浮上した。軟弱地盤は最も深いところで海面下90bにも達し、日本国内でその深さに対応できる作業船が存在しないのだ。地盤工学が専門の鎌尾彰司日大准教授は、「水深90bにも及ぶ軟弱地盤を改良する工事は聞いたことがない。工事の難度が高く地盤改良が可能かどうか想像することすらできない」と述べ、仮に国内にある最大深度(約70b)の作業船を使っても底まで改良されないため地盤沈下が生じ、安全な構造物ではなくなると指摘している。

 沖縄県の試算では、工期もさらに5年以上延び、完成まで13年かかることとなる。建設費用も当初の10倍の2兆5500億円にのぼると言われる。一体どれだけの血税を捨てるつもりなのか。安倍政権が何と言おうが、新基地建設計画は完全に行き詰っているのである。

不参加許さぬと全国から

 「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」は2月24日、全県実施されることが決まった。1月29日の沖縄県議会臨時会で与野党が歩み寄り、「賛成」「反対」に「どちらでもない」を加えた3択の条例改正案が賛成多数で可決されたことを受け、不参加を表明していた5市(沖縄、うるま、宜野湾、宮古島、石垣)が参加を表明した。その背景には多くの市民の闘いがあった。

 2月1日、キャンプ・シュワブゲート前で行われた辺野古土曜大行動の集会で、沖縄、うるま、宜野湾の3市の市民有志から、県民投票参加を勝ち取った熱い報告があった。市議会の傍聴、市長との面談交渉、抗議集会など、裁判闘争も辞さない構えで連日、行動が取り組まれた。沖縄市では毎日の抗議・要請電話が千件以上にのぼり、議会に対する投書が他市町村だけでなく県外からも寄せられた。

 全国からの応援が後押しになったという。まさに市民の粘り強い力によって投票権を勝ち取ったのだ。

圧勝へ多様な取り組み

 こうした中、県内では「2.24県民投票」「投票に行こう」などのプラカードを国道沿いで掲げる市民ボランティアがあちこちで登場している。また「辺野古県民投票の会」の元山仁士郎代表や漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さんら4人が語り合うイベントを若者が主催したり、沖縄キリスト教学院大学をはじめ名桜大学や那覇市のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」などが呼び掛ける模擬投票と、多様な取り組みが次々と生まれている。

 自民・公明両党が仕組んだ「どちらでもない」のあいまいな選択肢に惑わされず、「反対に『〇』」の投票をいかに増やしていくかが重要となる。県民投票による圧倒的反対の民意を安倍政権に突きつけ、辺野古新基地建設策動に終止符を打とう。
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