2019年03月08日 1566号

【辺野古埋め立て賛否問う/沖縄県民投票/デニー知事票上まわる圧倒的反対/民主主義の勝利示す43万票超/41全市町村で反対多数】

すべての指標突破

 やはり県民は圧倒的に反対だった。「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」が2月24日投開票され、反対が72・15%の43万4273票。昨年9月知事選で玉城デニー現知事が獲得した過去最多の39万6632票を4万票近く上回る票を積み上げ、投票率も焦点と言われた50%を超える52・48%。県民投票で辺野古新基地建設反対の民意を示す指標と言われていた数字をすべて突破した。

 県民投票条例の規定により、反対票が投票資格者総数115万3591人の4分の1(28万8398票)を超えたことで、県知事は投票結果をもって3月1日、首相官邸と米国大使館を訪れる。

 玉城知事は25日未明、県庁で会見し「辺野古の埋め立てに絞った県民の民意が明確に示されたのは初めてで、極めて重要な意義がある」と強調。「辺野古の埋め立てを決して認めないという断固たる民意を政府は真正面から受け止めるべきだ。工事を中止するよう強く求めていく」と語った。

 

言い訳できぬ政府

 今回の県民投票の結果は計り知れないほど重い。

 知事選の玉城デニー圧勝によって辺野古反対の民意が示された≠ニ言っても、政府は知事選は辺野古だけが争点ではない≠ニ県民意思をすり替える。メディアの県民世論調査で辺野古新基地建設反対が7割を超えても、「いちいち世論調査の結果にお答えするのは控えたい」(菅義偉<よしひで>官房長官)と無視し続けてきた。

 しかし、今回はそうはいかない。いわば受け身的な世論調査ではなく、条例に定められた法的手続きで県民一人ひとりが投票所に出向き、辺野古新基地「反対」に〇をするという行動を伴った72%の反対だ。県民投票連絡会の稲嶺進共同代表は「政府はこれで言い訳はできなくなった。民主国家なら民意を受け止めるべき」、「『辺野古』県民投票の会」元山仁士郎代表も「沖縄の民主主義が大きく発展する一歩」と語る。

 辺野古ゲート前の抗議・阻止行動も、辺野古反対の県民大多数の意思が示された事実を根拠とする取り組みとしてさらに自信をもって立ち向かえる。沖縄平和運動センター・山城博治議長は「目標の40万票を上回り、揺るがない民意が示された。政府は最低限工事を中止して、民意に向かい合うべき」と強調した。

与党支持者も反対票

 今回の県民投票では、地元2紙、共同通信の出口調査によれば、辺野古新基地建設を推進する自民党の支持層で反対が48・0%に上り、賛成40・6%、どちらでもない11・4%を上回った。自民党支持層でも多数が反対票を投じ、公明党支持層も同様だ。

 安倍政権は、県民投票告示の2月14日以降も辺野古沿岸部への土砂投入を強行し続けた。国会でも、大浦湾側の軟弱地盤の問題を追及されその存在を認めざるを得なかったうえ、地盤改良工事で砂杭7万7千本の打ち込み、工事期間の延長、建設費の増大など大問題が次々と指摘されても、まともな答弁をまったく行わなかった。こうした政府の対応では、与党支持層であろうと新基地建設計画をもはや支持表明できない状況になってきている。辺野古を抱える名護市、普天間基地の宜野湾市でも、反対票が多数を占めた。県内41市町村のすべてで反対票が上回った。

民意否定の開き直り

 安倍晋三首相は2月25日午前、県民投票で「反対」が有効投票の7割を超えたことについて、「結果を真摯に受け止める」と口にしつつ、「普天間基地が固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければならない。これ以上先送りできない」と、引き続き新基地建設推進の姿勢を示した。どこが「真摯な受け止め」か。沖縄県民のこれほどの民意が示された翌朝の言葉とは耳を疑う。

 さらに安倍は「これからもご理解をいただけるよう全力で県民との対話を続けていきたい」と言い放った。「県民にご理解をいただく」と言いながら、自民党沖縄県連は県民投票で「自主投票」を決定し、「辺野古移設」の正当性を訴えることすらしなかった。県民が感じている新基地建設への疑問や不安に政府は何一つまともに答えようとせず、説得する努力もいっさいしなかった。今さら「全力で県民との対話を」など厚顔無恥もはなはだしい。

 菅官房長官は「県民投票は普天間の危険除去には触れておらず、玉城知事の考えを聞きたい」となお開き直り、岩屋毅防衛相に至っては「普天間返還も強い民意だ。工事については進めさせていただきたい」と明言した。これほど公然と民意、民主主義を否定する政権があっただろうか。

3・16に県民大会

 投票から一夜明けた25日、政府・沖縄防衛局は、「これ以上、民意を無視するな」と抗議する市民を排除し、工事作業を強行した。防衛局は3月25日からは辺野古沿岸域の第2工区への新たな埋め立てを行うと発表し、工事拡大をもくろんでいる。

 県民投票に呼応した全国市民投票、シール投票をはじめ創意ある連帯行動はかつてなく広がった。沖縄県民の勇気ある意思表明に応え、辺野古新基地建設工事を止めるようさらに全国で立ち上がるときだ。3月16日には那覇新都心公園で県民大会が数万人規模で開催される。連帯をいっそう広げ、土砂投入即時中止、新たな工区への埋め立て阻止を実現しよう。    (N)
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