2019年03月08日 1566号

【みるよむ(509) 2019年2月23日配信:イラク中央銀行の資金を盗んだのは誰だ?】

 2018年11月、イラク中央銀行の金庫に地下水が流入し、70億ディナール(約6億5千億円)の紙幣が破損したと発表された。ところが、実は政治家と銀行幹部が資金を着服していたものだという。サナテレビはこの事件について市民にインタビューした。

 イラク中央銀行は、政府の管轄下で紙幣の発行や金融政策などを担当し、日本の日本銀行にあたる。金庫から巨額の紙幣が破損で失われるなどという事故≠ェ本当にあり得るのか。

 最初に登場するのはイラク中央銀行で働いている現役の労働者だ。男性は「銀行内部のお金はすべて金庫に入れ、規定に従って封印されている」と証言する。地下水や雨水が入り込んで紙幣を破損するなど誰も信じない。「市民を馬鹿にするのもいい加減にしてほしい」と怒りをあらわにする。

 なぜこんな事態になったのか。この男性は「彼らはイラク中央銀行で大規模な汚職をした。国家の資金を盗み取った」と断言する。被害はもっと大きく、500億ドル(約46億円)にも達するという。中央銀行幹部による犯罪なのだ。

 他の市民も憤りを隠さない。「こんな問題は世界のどこにも起こらない」と糾弾し、「イラク国民議会は、中央銀行のお金を盗み、紙幣を台無しにするために働いた連中に責任を取らせなければならない」と求める。

 中央銀行の金庫に収められているのは国民の財産だ。本来なら「住居を追われた人たちを支援したり、失業をなくしたり、学校を建てるための資金」が、汚職官僚たちに盗み取られたのだ。

汚職幹部を喚問し裁判に

 コメンテーターのサジャド・サリームさんは「こんなウソはイラク市民には通用しない。資金は中央銀行の職員によって盗まれ、イラク国外にひそかに持ち出された。政府当局のトップが汚職をした。彼らは、イラクの資金が消えたことへの責任を取らなければならない」とコメントする。

 市民活動家もイラク国民議会に対して「銀行の総裁を議会に喚問し、裁判にかけろ」と要求する。

 イラクの政治家も中央銀行幹部も汚職にまみれている。日米のグローバル資本は、こうした腐敗政治家・官僚たちと結託して石油権益を確保してきた。汚職の構造を許さない、と闘うイラク市民と連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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