2019年03月08日 1566号

【京都原発賠償訴訟 3・13控訴審第2回期日 1_シーベルト避難基準の認定求める】

 原発賠償を求める集団訴訟が全国に広がり、判決も続くなかで3月13日、大阪高裁で京都訴訟控訴審の第2回期日が行われる。原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会事務局長の奥森祥陽さんから支援の訴えが寄せられた。

 2月20日、横浜地裁において福島原発かながわ訴訟の判決が出された。判決内容は、五たび国の責任を認めたこと、避難指示等が出された区域に居住していた原告に対しては明文的に「ふるさと喪失慰謝料」を認めるとともに、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域の違いによる慰謝料の格差を縮小させるなど、大きな前進面がある。一方、屋内退避区域や緊急時避難準備区域を含めた浜通りの一部、中通り北部及び中部に居住していた原告に対しては「ふるさと喪失慰謝料」を認めず、「自己決定権侵害慰謝料」しか認めなかったのは見過ごせない問題だ。

 横浜地裁判決は、「避難指示区域の指定がない居住地からの避難の合理性」については「従前の被ばく量をわずかでも超える被ばくをすれば、がんの発症ほか健康上の影響を受けるということまで統計的に実証したものではないから、しきい値のないLNTモデル(注)を直接の基準とすることはできない」とし、慰謝料は「健康に悪影響を及ぼし得る放射性物質の飛来の可能性の程度に応じて」裁判所が決める、としている。

京都判決と共通する問題点

 ここで、昨年3月15日の京都地裁判決における避難の相当性(合理性)の基準を再確認しておく。

 京都地裁判決は、横浜地裁判決と同様、しきい値なしの「LNTモデルは科学的に実証されたものとはいえず、年間1_シーベルトを避難の基準とすることはできない」と原告の主張を切り捨てた。一方で、「政府が避難指示を行う年間20_シーベルト基準が、そのまま避難の相当性を判断する基準ではない」とし、裁判所として独自の判断基準を示し、国の中間指針が示す「自主的避難等対象区域」はもちろん、それ以外の会津地方、茨城県、栃木県、千葉県からの避難も広く認定した。

 それぞれに積極面はあるものの、京都地裁判決も横浜地裁も、LNTモデルを採用せず、年間1_シーベルトを避難の基準として認めなかった点は共通している。年間1_シーベルトを避難基準として認定すると、対象者と賠償額が桁違いに大きくなることを裁判所が恐れているとしか考えられない。

 控訴審でこの点を突破していくことが大きな課題である。

控訴審勝利へ傍聴・支援を

 京都訴訟団(原告団・弁護団・支援する会)は、控訴審での勝利をめざし、京都地裁判決の問題点を明らかにして控訴審での争点を鮮明にするために、学習講演会を開催してきた。第1回(9月22日)は「小児甲状腺がんの多発」(講師は山内知也・神戸大教授)、第2回(11月10日)「避難の相当性」(講師は平川秀幸・大阪大教授)、第3回(2月16日)「放射線安全論(ジャパン・スタンダード)批判」(講師は林衛・富山大准教授)と続けてきた。

 次回は、東京電力刑事訴訟で明らかになった事実を賠償訴訟にも活かすために、ジャーナリストの添田孝史さんを講師に行う予定だ。

 12月14日の控訴審第1回口頭弁論には125名の支援者が結集し、傍聴席満杯でスタートをきった。法廷では、原告団共同代表の福島敦子さんが意見陳述し、弁護団は控訴理由(京都地裁判決の問題点)を明快に主張した。

 第2回は、3月13日(水)11時開廷(集合10時)。原告側は損害総論をプレゼンテーションする。弁論後の報告集会では、福島原発かながわ訴訟(横浜地裁)判決についての解説も予定している。
ぜひ、ご支援ください。

支援する会ホームページ

(注)LNTモデル
 放射線量とがんや白血病などの発生確率は直線的に比例し、しきい値(それ以下は発生しないという値)は存在しないという科学的見解。



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