2019年03月15日 1567号

【MDS集会基調講演/東アジア平和確立、沖縄新基地建設断念、改憲安倍内閣打倒、市民生活改善を掲げ地方選に勝利しよう】

 3月2日、横浜と大阪で開催されたMDS(民主主義的社会主義運動)集会の基調講演は以下のとおり(要旨を編集部の責任でまとめた。4−5面に関連記事)。

 2月24日投開票された沖縄県民投票は、辺野古新基地建設NOの県民の意思が明確に確認された【図表1】。投票結果は、「反対」が「賛成」「どちらでもない」をはるかに超えた。

 基地反対を掲げた玉城デニー候補が知事選で獲得した過去最多の39万6632票を大きく超えた。自公の事実上のボイコットにもかかわらず投票率は52・48%と50%を超え、2014年衆院選投票率52・36%を超えた。また全市町村で「反対」が最多であった。沖縄県民投票成功の目安と言われた3つの数字(投票率50%、知事選玉城得票数、投票資格者の4分の1=知事が結果を首相・米大統領に通知)をすべて満たした。また普天間基地所在地である宜野湾市、新基地建設の名護市においても反対が多数を占めた。


民意は明確に示された

 この結果を受け玉城知事は「辺野古の埋め立てに絞った県民の民意が明確に示されたのは初めてで、極めて重要な意義がある」「辺野古の埋め立てを決して認めないという断固たる民意を政府は真正面から受け止めるべきだ。工事を中止するよう強く求めていく」と述べた。「辺野古」県民投票の会・元山仁士郎代表は「今回の県民投票は、一つの争点につき明確な県民の意思を表明した点で、この国の民主政治の歴史に新たな意義ある一歩を刻んだと確信している…安全保障問題が国の専権事項であることを理由に沖縄の民意を踏みつぶすことがあってはならない」との声明を発表した(2/25毎日)。

 メディアの多くも「政府は今度こそ、県民の意見に真摯に耳を傾けねばならない」(2/25朝日社説)、「もはや普天間の辺野古移設は政治的にも技術的にもきわめて困難となった。政府に今必要なのはこの現実を冷静に受け入れる判断だ」(2/25毎日社説)とし、県民投票の結果を受け入れるよう主張した。

 しかし安倍首相は、2月25日、「普天間の全面返還については、日米で合意してからすでに20年を超えて、今なお実現しておらず、もはや先送りは許されない」とし投開票の翌日も工事を続行。何としても将来自衛隊が使用できる新基地を建設しようとしている。事実上の「政府機関紙」といえる読売新聞は「投票率52% 広がりを欠く」「『反対』最多 影響は限定的」と評価し、他紙に遅れて出した26日の社説では、「沖縄県の基地負担を軽減する長年の取り組みを混乱させることにならないか。安全保障政策を県民投票で問うことの危うさを直視すべきだ」と県民投票の意義を否定した。

 このような評価は安倍と読売の主観的願望であり全く事実と異なる。自公は投票率を下げるため自主投票とした。ある県議はその理由を「民意は埋め立て反対ではないと主張できるからだ」と説明した(2/22東京新聞)。だが、投票した自公支持者も反対票が多数だ。これまでの住民投票、選挙結果よりも圧倒的多数が明確に新基地建設NOを示した【図表1】。

 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は、沖縄県民投票に合わせて連帯し、全国市民投票を実行した【図表2】。このような運動を積み重ね改憲阻止、安倍打倒に進まねばならない。辺野古新基地建設を断念させることはできる。


辺野古に基地は作れない

 辺野古新基地建設は技術上もきわめて困難になっている。

 1月、防衛省は埋め立て地域の軟弱地盤の改良工事のため設計変更すると発表した。砂の杭7万6696本を打ち込むとする。しかし水面下90bまで軟弱地盤が存在する。鎌尾彰日本大学理工学部准教授は「水深90bまでの地盤改良工事は知る限り例はない。国内にある作業船では難しいのではないか」という(2/7琉球新報)。防衛省も国内で深さ65b、海外で70bまでの工事実績はあるが、それ以上はないことを認めている。

 この地盤改良工事で想定する砂は650・9万立方bに上り、元の計画(58万立方b)の約11倍となる。県内砂利採取量の3年半から5年分だ。これらを踏まえ沖縄県は、辺野古新基地建設工事は工費2兆5000億円、完成までに13年かかるとしている。

 菅官房長官は「一般的な施工実績が豊富な工法で地盤改良工事を行うことで、対応は可能だ。環境負荷も当初予測された影響の範囲内にとどまる」(2/22朝日)と強弁するが、メディアまでもが「技術的にも費用の面でも辺野古移設は非現実的になっている」(2/3毎日社説)、「現行計画の行き詰まりが明らかになった今、政府に求められるのは、工事を停止し、米国政府と代替案を探る協議を始めることだ」(2/23朝日社説)との認識を示している。そもそも防衛省は軟弱地盤の存在を3年前から認識しており、それを隠して工事を強行し、基地建設の既成事実を作ろうとしてきた。地盤改良が可能としても完成まで13年かかるのなら、「普天間基地の危険性除去」という政府の新基地建設理由が嘘であることは誰の目にも明らかだ。

 米国側からも辺野古新基地建設への疑問が公然と語られている。元沖縄米海兵隊政務外交部次長ロバート・エルドリッジは「米海兵隊は移設を望んでいない。普天間は世界最大級の飛行機が離着陸できる約2700bの滑走路があるが、辺野古は約1200b。96年の移設合意は同等の機能を維持するのが条件であり、辺野古は満たしていない」(2/7琉球新報)。元米国務長官首席補佐官ローレンス・ウィルカーソンは「海兵隊が現在も沖縄に駐留を継続している元々の判断をたどれば、何ら日米の安全保障とは関係ありません。沖縄駐留を継続した方が必要経費を節約できるし、何よりも海兵隊という組織の政治的な立ち位置を守ることができるという分析だったのです…辺野古の基地は、中国など外部からの攻撃に脆弱すぎるという問題があります。2、3発の精密誘導弾の攻撃を受ければ、滑走路は跡形もなく消え去るでしょう。戦略的な観点で言えば、辺野古の基地建設は愚かな計画です。もし私が安倍晋三首相の立場であれば、現計画に固執して沖縄の人々と敵対する手法はとらないでしょう」(2/22朝日)とまでいう。

違法行為重ね埋立強行

 米国側の辺野古新基地建設への広範囲な疑義があるのは明らかで、強硬に推進しているのは日本政府だ。

 埋め立て承認撤回に対する審査請求のように、政府の基地建設方針への県の異議申し立てを同じ政府機関が審査し却下する。工事での政府、防衛相の違法行為は山ほどある。埋め立て現場では細粒分が多い赤土が使用されている可能性が高い。県は防衛局に対し立ち入り調査と検査用土砂提出を求めているが、応じていない。沖縄県赤土等流出防止条例に違反している可能性が高い。安倍首相は1月6日「土砂の投入にあたって、あそこのサンゴは移している」と述べたが、移植されたのは別海域のオキナワハマサンゴ9群体のみ。埋め立て海域全体では7万4000群体の移植が必要になるが、土砂が投入されている区域からはサンゴを移植していない。

軍拡・改憲でなく生活保障を

 安倍政権は軍拡、改憲を掲げ新自由主義を進めた。その結果グローバル資本が利潤を極大化し、市民生活は悪化した。日本でもアベノミクスのもと大資本家は富を拡大させ、他方で「99%」の市民は生活が切り縮められている。これに対し、安倍政権は財政出動ではなく統計調査の不正で対応した。【図表3】に見られるように生活の基本を決める賃金が上昇しておらず、軍事費増大、法人税・所得税減税のために社会保障費が削られた。削減額は安倍政権の7年間で4兆2720億円だ。賃金が上がらず、社会保障費が削減されて生活が改善されるわけがない。



 米朝首脳会談は残念ながら合意には至らなかった。今後も協議は続けられるが、戦争勢力の妨害を打ち破り朝鮮戦争終結、東アジア平和構築に前進しなければならない。米朝関係は事実上の戦争状態に逆戻りすることはないが、平和へ大きく前進するまでには至らなかったということである。我々は闘いの力で戦争勢力の東アジア平和構築妨害策動を許さず朝鮮戦争終結、東アジア非核化に進まねばならない。沖縄県民は安倍政権の支配を打ち破り、高らかに県民の意思を示した。安倍が沖縄で完敗した今、安倍を追い落とさねばならない。安倍が沖縄でやろうとすることは県民投票を無視して埋め立てを進めることである。しかしそのことはますます安倍が墓穴を掘ることになる。

 改憲、軍拡、生活破壊の自公、維新に対決して豊かな市民生活を取り戻さねばならない。【図表4】に示されるように軍事費を削減することで市民生活は大きく改善される。沖縄県民が突破したように地方から安倍政権を追い詰めていかねばならない。

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