2019年03月15日 1567号

【みるよむ(510) 2019年3月2日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラク市民と外国からの干渉】

 2003年の米軍占領以来、イラクは常に米国やイランなどから国内問題への干渉を受けてきた。その結果、市民の暮らしはどうなったのか。2019年1月、サナテレビはバグダッド市民にインタビューを行い、意見を聞いた。

 最初に登場する政治評論家は「イラク市民は、米国と、中東の大国イランの影響力がもっと広がるのではないか、と心配している」と指摘する。政治的に不安定な状態では、貧困や失業など深刻な社会問題にも対処できない。「2003年以来、市民を人間として大切にする政治体制があると感じたことはありません」という実態なのだ。

 肝心のイラク政府はどうなっているのか。2018年5月12日イラク国民議会選挙が行われたが、各政党、イスラム主義勢力、クルド民族主義勢力らの権力闘争が延々と続き、現在のアブドルマハディ首相が就任したのは5か月以上たった10月25日だった。2月末段階でも一部の閣僚はまだ決まっていない。

 この権力闘争では、シーア派勢力の背後にイランがおり、クルド民族主義勢力などには米国が強い影響力を持つ。アブドルマハディが首相に選ばれたのは、多数の宗派主義・民族主義勢力が入り乱れるイラク政界で「敵がいない」ことが最大の理由と言われている。

 このような政権の下で、「イラクの子どもたちは、空腹や貧困、低い水準の社会サービス、教育に苦しんでいる」。政府は全く対応できていないのだ。ある大学教員は「イラクと同じように内戦で苦しんできたソマリアで文化フォーラムが開かれたが、イラクでは文化フォーラムも、文化人のための文化センターもない」と批判する。

サダムよりましのはずが

 市民活動家は「2003年のサダム・フセイン政権崩壊後、市民は『サダム政権よりはましな統治になるだろう』と考えていた」と語る。しかし実態は、市民の苦しい生活などそっちのけで権力闘争と汚職に明け暮れる政治家ばかりだ。

 米国やイランは、イラクの莫大な石油利権のために干渉してきた。そのことで市民の安全や生活の状態もますます悪化している。サナテレビは、市民自身が立ち上がり政治を変えていこうと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋) 
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