2019年03月15日 1567号

【沖縄県民投票とメディア/政権と一体化した「読売」報道/「反対7割超」を全力でわい小化】

 民主党政権を「悪夢」と表現した安倍晋三首相。彼にとっては辺野古埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票の結果も「悪夢」だったに違いない。辺野古新基地建設に反対の民意が明確に示された事実を世間に印象づけたくない――そんな安倍首相の願いを御用メディアは全力でかなえようとした。こいつらホント、わかりやすすぎる。

結論部分で腰砕け

 2月24日投開票の沖縄県民投票をマスメディアはどう報じたのか。翌25日の全国紙朝刊を見てみよう。1面トップ記事に持ってきたのは朝日新聞と毎日新聞。見出しはそれぞれ「辺野古『反対』72%」(朝日)、「辺野古反対7割超」(毎日)であった。

 朝日新聞は計6面(写真特集含む)を使って県民投票を報じている。社説では「沖縄県民は『辺野古ノー』の強い意思を改めて表明した」と指摘。「日本国憲法には、法の下の平等、基本的人権の尊重、地方自治の原則が明記されている。民主主義国家において民意と乖離(かいり)した外交・安保政策は成り立た(ない)」と述べ、「辺野古が唯一」に固執する安倍政権の姿勢を批判した。

 おおむね妥当な論調だが、1面の解説記事(佐藤武嗣・編集委員の署名記事)はいただけない。結論が「せめて自治体と向き合い、自らを『謙虚に省みる』姿勢が政権には必要だ」なんて、腰砕けもいいところ。投票結果を真摯に受け止めよと言いながら、工事中止・辺野古案の断念を政府に迫らないのはおかしい。

 その点、毎日新聞は「もはや埋め立てはやめよ」(2/25社説)との主張をはっきり打ち出している。社会面では異例の特大見出しで「諦めぬ沖縄の意思」「許されぬ見ぬふり」と強調した。遠藤孝康・那覇支局長による解説記事は、基地問題の原点を74年前の沖縄戦に求めている。東京発の報道に欠落しがちな歴史的視点を補う記事として大いに評価したい。

健康記事がトップ!?

 さて読売新聞である。1面のトップ見出しは「適量ですか 高齢者の薬」。何と健康コラムを一番目立つ右肩に持ってきた。県民投票も1面で報じてはいるが、扱いは4番手。社会面の報道はない。全国紙5紙のうち「読売」だけがこの日の社説で県民投票を扱わなかった。安倍政権に都合が悪い事実は読者の印象に残したくないという編集方針が露骨である。

 政治面の大見出しは「投票率52%広がり欠く/『反対』最多 影響は限定的」。記事本文では「盛り上がりに欠け、県民の総意と呼べない」(自民党県連幹部)などケチ付けコメントばかり載せている。なにがなんでも県民投票の意義をおとしめたいようだ。

 では、投票結果について沖縄の人びとはどう感じているか。バズ・フィードニュース2月26日付配信記事が2人の若者の感想を載せている。県民投票の全権実施を求めてハンガーストライキを行った大学院生の元山仁士郎さん、そして昨年の沖縄県知事選で自公擁立候補を支える会の青年部長を務めた嘉陽宗一郎さんだ。自民・公明両党が県民投票に背を向けたにもかかわらず投票率が50%を超えたことに2人は驚き、普段は選挙に行かない人も投票した結果だと評価した。嘉陽さんに至っては「率直に『沖縄はすごいな』と思いました」とまで述べている。

 自己決定権をないがしろにされてきた沖縄の人びとが妨害をはねのけ意思表示をした。そのことに政治的意見の異なる若者がともに感動しているのだ。そうした市民の視点が「読売」にはかけらもない。沖縄の民意を圧殺する安倍政権と完全に一体化している。

 2面がまたひどい。「沖縄米基地『役立つ』59%」の大見出し。これは「読売」が行った全国世論調査(2/22〜2/24実施)の記事である。“沖縄が何と言おうが、国民は米軍基地を必要としている”と言わんばかりの紙面構成だ。実は、この調査でも政府の辺野古埋め立て方針に「反対」(47%)が「賛成」(36%)より多いのだが、それを伝える見出しは小さい。一事が万事この調子なのだ。

ネット記事の印象操作

 産経新聞の1面トップ記事は「海自観艦式/韓国招待せず」であった。「天皇在位30年式典」ではなかった。ネトウヨ迎合が著しい最近の「産経」としては、「天皇奉祝」より「韓国叩き」のほうが重要なのであろう。

 新聞本体は部数減少にあえぐ「産経」だが、ネットではヤフーやグーグルに記事が取り上げられることが多い。25日付配信記事は「全有権者の6割は辺野古移設に『反対』せず」が見出し。たしかに全有権者に対する反対票の割合は37・6%だが、その論法でいくと「辺野古『賛成』は全有権者の1割未満」ということになるのだが…。

 もっとも、そのようなツッコミは「産経」には通用しない。見出しだけを眺めたネット閲覧者に歪んだ印象を刷り込むことを連中は確信犯的に狙っているのである。

   *  *  *

 25日付「読売」は片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんの書籍広告を大きく載せている(3面)。米国でも大評判の整理整頓術のポイントは「ときめかないモノは捨てる」こと。なるほど。安倍御用メディアは近藤(こんまり)メソッドの実践者であったか。安倍首相がときめかないニュースはばっさり捨てているし…。それを示唆するための広告掲載なら相当なセンスだが、ま、ただの偶然でしょう。   (M)

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