2019年03月22日 1568号

【1568号主張 福島原発事故8年 続く無責任/棄民政策転換、全原発廃炉へ】

被災者無視の棄民加速

 福島原発事故から8年。安倍政権は復興基本方針の見直し案を閣議決定した。これまで続けてきた福島棄民政策を加速させる悪質なものだ。

 8年が経過し多様化する被災者・被害者の要求とはかけ離れた内容が並ぶ。福島帰還促進、「風評被害」撲滅など、新「方針」の内容は被災者支援を切り縮め、安上がりに済ませたい安倍政権の意向に沿ったものばかりだ。

 被災者が求めた「年間被曝量1ミリシーベルト以下」の要求は投げ捨てられ、国際基準からは非常識な高線量地帯の避難指示が次々解除。多くの被害者が望まない帰還か、避難先で家賃など新たな経済的負担に耐えながらの生活「再建」かの選択を迫られている。住宅無償支援に続き、この3月には延長されてきた避難者の家賃補助もついに打ち切られる。未だ政府・東京電力の誰ひとり責任をとらず、裁判外集団申立て手続き(ADR)による賠償は東電の拒否で頓挫している。8年が経過する福島の現実だ。

「棄民庁」に後継組織

 新「方針」には、事故から10年限りで廃止予定だった復興庁に後継組織を置くことが盛り込まれた。復興庁がこれまでしてきたことを見ればその真の狙いがわかる。

 復興庁関係者が相次いで起こした暴言事件はその典型だ。支援を求める被害者を「左翼のクソども」と罵り、何も対策を取らず被害者を捨て置くことを「課題解決」と言い放ったのは水野靖久復興庁参事官だ。2017年には今村雅弘復興相が「自主避難は自己責任。不満なら裁判でもやればいい」と区域外避難者への敵意を露わにした。避難者・福島残留者・帰還者にかかわらず支援するよう定めた「子ども・被災者支援法」を完全に骨抜き、解体したのも復興庁だ。被害者のための仕事など何一つしていない。

 一方で、効果が疑問視された除染には3兆円近い国費を投入するなど、グローバル資本のための利権事業には大盤振る舞いした。今なお福島では、復興に名を借りた巨大施設建設、安倍政権や内堀県政に反対する意見を抑圧するための「風評対策」、新たな放射能安全神話を子どもたちにすり込むための「放射線教育」、福島を終わったことにするためのモニタリングポスト撤去策動などが複合的に進む。子どもの甲状腺がんは207人(昨年12月現在)に上るが、因果関係さえ認めない。

原発推進総崩れ、廃炉を

 安倍政権の原発再稼働路線は行き詰まっている。原発輸出案件はすべて頓挫。九州、関西で9基の再稼働を許したものの、全原発の4割に当たる24基ですでに廃炉が決まった。御用学者のウソや隠蔽が再び暴かれ始めた。福島原発事故以降、あらゆる世論調査で「脱原発」が半数を割ったことはない。全原発即時廃炉を求める定例行動、全国各地の原発差し止めや賠償、刑事責任追及の裁判も続く。

 安倍政権が福島原発事故を隠し「収束」を狙うのはすべて東京五輪のためだ。大阪でも万博、カジノなどのイベント行政に批判が集まる。グローバル資本のぼろ儲けと市民切り捨て政治はあらゆる課題に共通だ。すべての闘いを結集し、19地方選勝利で安倍退陣、全原発廃炉を勝ち取ろう。

  (3月10日)
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