2019年03月29日 1569号

【未来への責任(270)三・一運動100年 文在寅大統領演説】

 1919年3月1日、朝鮮の人びとは「独立宣言」を発した。200万人を超える人びとが決起、日本の植民地支配に抗議し「独立万歳」を叫んだ。その「宣言」の中に次のような一節がある。「いま、わが朝鮮を独立させることは、朝鮮人が当然、得られるはずの繁栄を得るということだけではなく、そうしてはならないはずの政治を行い、道義を見失った日本を正しい道に戻して、東アジアをささえるための役割を果たさせようとするものであり、同時に、そのことで中国が感じている不安や恐怖をなくさせようとするためのものでもある」(3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーン・現代語訳)

 朝鮮の人びとは、朝鮮総督府の武断統治の下で苦しみながらも、なお日本に対して敬意を表し、日本が正しい道に戻れば「東洋の支持者たるの重責をまっとうできる」と呼びかけてくれた。これのどこが「反日」なのか? このような「宣言」を発する人びとの誰が「暴徒」なのか? 日本人は今一度、この「宣言」を真摯に読み返してみるべきではないか。

 ソウル・光化門(クァンファムン)広場で開催された3・1運動100周年の記念式典で文在寅(ムンジェイン)大統領が演説した。その中に以下のようなフレーズがあった。「歴史を鏡にして、韓国と日本が固く手をにぎる時、平和の時代が大きく私たちの側に近づいて来るでしょう。力を合わせて、被害者の苦痛を実質的に治癒する時、韓国と日本は心が通じる真の友になるでしょう」

 3月1日を前に日本では、韓国で「反日」の機運が高まるなどと宣伝されていた。外務省は「『3・1独立運動100周年』に際するデモ等に関する注意喚起」を渡航者、滞在者に送っていた。しかし、3月1日当日、韓国では「反日」の動きなどは一切なかった。文大統領は日本に対して、植民地支配を清算し、ともに手を取り「東洋平和」をつくろうと呼びかけた。日韓が「力を合わせて」植民地支配の「被害者の苦痛」を治癒する作業を進めようと提起した。それができた時、日韓は「真の友」になるとの“夢”を語った。

 今日本では、大法院判決を履行させるべく被害者側がやむなく進めている被告企業の資産差し押さえ―換金化の動きに対して、「報復」措置を講ずべきとの議論が起きている。麻生財務相は「関税に限らず、送金の停止、ビザ発給停止とかいろんな報復措置があろうかと思う」(3/12国会答弁)などと明け透けに語っている。麻生鉱業が戦時中に行った朝鮮人強制連行・強制労働の罪業に頬かむりして、このようなことを言う麻生の破廉恥を批判する雰囲気すらこの国では失せている。

 「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」(ワイツゼッカー元ドイツ大統領)。今こそ、この言葉を胸に刻み、ねばり強く運動を続けていきたい。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)

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