2019年03月29日 1569号

【「日韓交渉から見た韓国大法院判決とは?強制動員問題の解決の道を探る!」集会 新たな提訴も、国際的闘いも】

 昨年10月30日、韓国大法院が強制動員被害者に損害賠償を命じる判決を下すや否や安倍首相は、「問題は日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済み」と断言した。

 しかし、日韓条約・請求権協定で本当に問題は解決済なのか。それを問い、判決以後の韓国内の取り組みを紹介する「日韓交渉から見た韓国大法院判決とは?強制動員問題の解決の道を探る!」集会(主催―韓国の原爆被爆者を救援する市民の会・日本製鉄元徴用工裁判を支援する会)が3月10日、大阪市内で開催された。

 日韓交渉過程の文書を読み解いた同志社大学の太田修さんは、判決の核心≠次のように語った。

 「日本政府は、日韓交渉の最初から朝鮮の植民地支配について、『施恵論(恩恵を施すこと)』や『近代化論(朝鮮の近代化に貢献)』、『領土分離論(国が分離しただけで賠償問題を生じる余地はない)』の解釈を前提に交渉を進めた。5億ドルの経済協力方式は日韓ともに経済開発を優先する政府のもとで、東西冷戦下での共産主義勢力に対して資本主義の優位性を見せるためのアメリカの戦略を背景に提起された。請求権協定は植民地支配正当化論が条文化されたもの。日本政府の主張の上に経済協力方式が積み上げられ、植民地支配責任を覆い隠し不問に付すものであった。被害者にとっては、過去に自らが受けた被害さえも条約によってなかったものとされる『条約による暴力』以外の何ものでもなかった」

国連特別報告官を招請

 韓国・民族問題研究所の金敏普iキムミンチョル)さんは、大法院判決後の韓国内での取り組みについて「盧武鉉(ノムヒョン)政権時に真相究明委員会がつくられ被害者の調査・確定、慰労金の支払いもされたが、その後保守政権に変わり不十分に終わった。ロウソク革命で文在寅(ムンジェイン)政権が成立したが、まだその成果は見えていない。ひとりだけ新日鐵住金の裁判原告が生存しておられる。生きている間に賠償金の支払いがされなければならない。韓国内での世論を活性化するために民弁(民主社会のための弁護士会)と協議して、新日鐵住金、三菱重工に対する追加訴訟をできるだけ早く行う、三井を相手にあらたに裁判を行う、希望があれば韓国内に進出していない企業をも対象に裁判を起こすことを決定した。しかし、裁判資料のない被害者など裁判で解決できない被害者救済のためにも『強制動員人権財団』が必要だ。韓国国会への財団法の早急な上程と日本企業を対象とした裁判提訴を進めていく」と紹介。「この3月、国連の真実・正義・賠償・再発防止特別報告官を招請して、強制動員被害者も含めた様々な人権被害者が参加するシンポジウムをソウルと済州(チェジュ)で開催し、この問題の国際化も図っていく」と語った。

 新日鐵住金・三菱重工の裁判に関わった奥村秀二弁護士は2005年の国連「重大な人権侵害に対する基本原則・ガイドライン」の重要性を、足立修一弁護士は中国人強制連行事件の和解で企業への圧力がなかったのに韓国の問題に対して圧力をかけるのは明らかな差別であることを指摘した。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会・中田光信)

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