2019年04月05日 1570号

【東京五輪買収疑惑/竹田JOC会長退任はトカゲの尻尾切り/メディアが報じない黒幕は電通】

 東京オリンピックの招致に絡む贈賄の疑いでフランス司法当局の捜査を受けている竹田恒和JOC(日本オリンピック委員会)会長が、6月の任期満了をもって退任すると表明した。典型的なトカゲの尻尾切りというほかない。五輪買収工作の主犯は大手広告代理店の電通だ。この事実に触れない日本のメディアは本当に腐っている。

カネで買った五輪

 東京招致委員会の理事長だった竹田会長が、正式にフランス司法当局の捜査対象になったのは2018年の年末。海外メディアは約3年前から招致活動をめぐる贈収賄疑惑を報じてきた。日本の報道ではわかりづらい贈収賄の構図を整理してみよう。

 疑惑はフランス検察が国際陸連(IAAF)の大規模汚職を捜査する過程で発覚した。ラミン・ディアクIAAF前会長の息子(パパマッサタ・ディアク)が、招致争いで日本のライバルだったトルコの関係者に「トルコはカネを払わなかったため、ラミンの支持を失った。日本はきちんと支払ったのに」と語っていたことがわかったのだ。

 たしかに、招致委員会はディアク息子が関係するコンサルタント会社の口座に、招致決定前後の2013年7月と10月の2回に分け約2億3千万円を振り込んでいる。この会社は実態のないペーパーカンパニーだった。このダミー会社を経由して「東京支持」の取りまとめを依頼する裏金=ワイロがディアク親子に渡ったというわけだ。

 IOC(国際オリンピック委員会)委員も務めたディアク父はセネガルの出身。よからぬ噂が絶えない人物で、「大票田」のアフリカの票を左右できる存在と言われていた。買収費用は1票10万ドル(約1100万円)が相場という証言もある。

 2017年10月20日付の仏ル・モンド紙によると、東京開催が決まった13年9月のIOC総会中、ディアク息子は次のようなメールを父に送っている。「(東京と開催都市を争っている)マドリードへ投票するようアフリカ諸国への働き掛けが全力で行なわれている。休憩時間になんとかせねばならない」。ディアク親子が集票工作を行っていたことを示す証拠として、海外では大きく報道された。


おもてなしの正体

 竹田会長はIOCの委員も退く考えを示したが、「正当なコンサルタント料を払っただけで不正はない」と言い張っている。だが、リオデジャネイロ五輪の招致をめぐり、ブラジル・オリンピック委員会の会長が2017年10月に逮捕されている。ディアク親子が絡む贈収賄の構造は東京と同じものだ。

 もはや竹田訴追は時間の問題――そう判断したIOC、日本政府、スポンサー企業は「竹田降ろし」に動いた。現職委員・会長の逮捕という最悪の事態を避けるためだ。メディアは「退任必至」と書き立て、続投に固執していた竹田会長を追い込んだ。だが、彼一人に疑惑の責任を押しつけ収拾を図るような報道には違和感がある。

 竹田会長は旧皇族の出身で、明治天皇のひ孫にあたる(息子は数々の差別発言で知られるヘイト作家の竹田恒泰)。あるスポーツ関係者は「よくも悪くも何もしない人」と竹田会長を評する。旧皇族ブランドが売りのお飾り的存在といってよい(むろん責任は免れないが)。

 招致活動を実質的に取り仕切っていたのは電通である。世界のスポーツ利権を牛耳る電通は東京オリンピックの組織委員会にも多くの社員を送り込んでおり、事実上の運営主体といってよい。東京開催で得る利益は数千億円単位と言われている。

 実は、疑惑のコンサルタント会社を招致委員会に推薦したのは電通だった。この会社の代表で口座の持ち主は電通関連会社の子会社に雇われた人物。そして、国際陸連のトップだったディアク父は電通の上得意である。

 このように、東京オリンピック招致の買収工作(まさに、おもてなし)は電通のシナリオだった。竹田疑惑ではない。電通疑惑なのだ。

「復興五輪」は大ウソ

 海外メディアは黒幕は電通だと指摘し、その役割を詳しく報道している。ところが、日本のメディアは電通の名前を一切出そうとしない。なぜか。広告収入に大きく依存するテレビ局はもちろん、新聞、雑誌などあらゆるメディアにとって、電通は触れてはいけない存在だからである。

 しかも、全国紙4紙(朝日、読売、毎日、日経)は東京オリンピックのオフィシャルパートナーだ(産経はオフィシャルサポーター)。利権共同体にしっかり組み込まれている。よって五輪翼賛ムードに水を差すような報道はする気がない。こいつらホントわかりやすすぎる。

   *  *  *

 「東京は福島から250q離れている。みなさんが心配するような危険性は全くない」。東京開催が決定する直前の記者会見で、竹田会長はこう述べていた。招致委員会の名誉会長だった安倍晋三首相もIOC総会の場で「状況はコントロールされている。東京には決して被害はありません」と力説した。

 これらの発言が示すように、日本政府が掲げる「復興五輪」なんて大ウソだ。連中は税金を私物化できる集金イベント、そして改憲を正当化する国威発揚イベントをやりたかっただけなのだ。薄汚いカネと総理大臣の嘘で招致したオリンピックなどいらない。安倍政権もろともやめてしまえと言いたい。      (M)

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