2019年04月12日 1571号

【野党議員おとしめる“放送テロ”/森友報道で苦情処理申し入れ/“アベちゃんねる”NHKにNO】

 NHKの“アベちゃんねる”化が止まらない。本紙でも繰り返し取り上げてきた(直近では3月29日付1569号8面「皆様ならぬ、アベさまのNHK」)。

 しかし、視聴者・市民も黙っていない。放送記念日の3月22日、東京・渋谷のNHK放送センター前で「NHKとメディアの『今』を考える会」主催の集会が開かれ、300人が「政権べったりの報道をやめよ」と声を上げた。同日午後には「森友ごみ問題を考える会」(加藤弘吉世話人)が放送法に基づく「苦情処理の申し入れ書」を視聴者対応窓口のNHKふれあいセンターに提出した。

 放送法27条は、NHKは「その業務に関して申し出のあった苦情その他の意見について適切・迅速に処理しなければならない」と定めている。申し入れはこの規定をよりどころにしたものだ。

 会が問題にしたのは、2月4日の「森友学園問題 立民・共産の議員の発言に工事業者が反論」とタイトルされたNHKニュース。

 森友問題の核心は国有地払い下げにおける約8億円の値引きだが、その唯一の根拠とされたゴミ試掘写真が偽装だったことを1月17日大阪で行われた野党合同ヒアリングで業者の藤原工業が認めた。野党議員は記者会見し、「値引きの根拠は崩れた」と主張した。NHKはこうしたことを一切報じないまま、半月たって突然前述のニュースを流す。藤原工業の社長が、参院予算委員会の理事懇談会の求めに応じて回答した文書の中で「私の発言が正確に引用されておらず、全く異なる意味内容になっている」と反論した、というのだ。

 だが同回答書で重要なのは、別々の試掘穴としていた3枚の写真が同一の穴のもので「写真の選定を間違えた」と説明されている点だ。NHKニュースはこれに触れていない。また、社長が野党ヒアリングで「報告書は若い社員がいい加減に作った」「深さは意識していない」と話したというのは「発言の一部のみを引用し、都合よく合体したもの」と社長の反論をそのまま伝えているが、ヒアリングにあたった野党議員には何ら取材も事実確認も行っていない。しかも、回答書では「野党」としか書かれていないのに、わざわざ「立民・共産」と政党名を明記して報道した。

 ゴミをめぐっては別の業者が地中3bまでは処理し終えており、それより深いゴミの存在を立証できるかどうかが焦点になっていた。野党議員は一つ一つ事実を調査・追及し、ついに試掘写真が偽装だったことを突き止めた。アベさまNHKはそれが気に入らない。そこで1月の野党ヒアリングは無視を決め込んだ上で、野党議員の活動をおとしめ、名指しで攻撃する誤報・虚報に及んだというわけだ。

 「不偏不党、真実及び自律」(放送法1条)が保障されるべき公共放送のあり方からかけ離れている。2月4日のニュース後、ネトウヨから「切り取り、ねつ造は反日野党の常套手段」「いつまで『モリ・カケ』やるつもり?」といった書き込みが相次いだ。アベちゃんねるの“放送テロ”がヘイト集団を勢いづかせる。

 苦情処理申し入れでは、裏付け取材のない報道がなぜなされたのか等をただし、放送法9条にのっとって訂正放送を行うよう求めた。NHK側は、期限は示さなかったものの、「内部で事実確認した上で回答する」旨約束したという。

 申し入れに参加した環境ジャーナリストの青木泰さんは「放射能がれきの広域処理問題では全国の市民が手をつないで反対運動に立ち上がり、400万d処理の計画を15万dに抑えた。まず自分たちが真実を見きわめ、インターネットで拡散し、週刊誌に取り上げさせ、新聞はじめ大手メディアに取り上げさせた。メディア・コントロールを打ち破ることで歴史は変わる」と話した。
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