2019年04月19日 1572号

【ミリタリー・ウォッチング 馬毛島―種子島を要塞化 自衛隊と米軍 数千人配備へ】

 2016年3月の与那国島への陸上自衛隊「沿岸監視部隊」160人配備強行に続いて、今年3月26日には、宮古島駐屯地に「警備隊」(ミサイル部隊)約380人が配備された。奄美大島でも同日、「警備隊」と地対空・地対艦ミサイル部隊計約550人の配備が強行された。石垣島でもミサイル部隊配備に向けた駐屯地建設着手が強行されている。南西諸島の自衛隊配備強化は急ピッチで進んでいる。

 そんな中、「普天間基地の移設候補地」を含め「基地活用計画」が度々取りざたされてきた鹿児島県馬毛島(まげしま、種子島から12`に位置する無人島)に新たな動きが現れている。

 1月9日、政府は160億円で馬毛島を自衛隊訓練場として買収・取得することで地権者と大筋合意し売買仮契約した、と報道された。防衛省は土地の鑑定価格を45億円としていたにもかかわらず、100億円以上も上積みした。地権者の債務問題が影響したのか、いまだ正式契約締結には至っていないが、契約の経過は利権の臭いプンプンのうさんくささである。

「訓練移転」だけでない

 今回の買収について、政府は、米空母艦載機による陸上離着陸訓練(FCLP)の硫黄島(東京都)からの移転先とする計画だと説明している。

 FCLPとは、空母艦載機が陸上の滑走路を空母の飛行甲板に見立てて離着陸を繰り返す(タッチアンドゴー)訓練で、甚大な騒音を伴う。もともと厚木基地で実施していたが、騒音問題が深刻化し、1991年以降は暫定措置として硫黄島で行っていた。「硫黄島が悪天候」の際などは、厚木基地や三沢基地、岩国基地でも実施された。騒音被害が深刻なことに加え、硫黄島は空母艦載機が現在駐留する岩国基地から約1400`離れているとの事情から、米側は代替地の早期整備を求めていたという。

 だが、馬毛島での米軍のFCLPは、多く見ても年間1か月程度だ。馬毛島買収にかかわる主要な計画は別にある。自衛隊の南西シフト=自衛隊増強計画に警鐘を鳴らす、元自衛官で軍事平和問題研究家の小西誠さんは指摘する。

 ―この全体的計画の実態は、自衛隊の南西シフト態勢下の「巨大基地」(一大要塞島)です。「島嶼(★とうしょ)戦争」下の、先島・南西諸島への、「事前集積拠点」「機動展開拠点」「上陸演習拠点」であり、この上に空自F35Bの基地、F15の基地、海自対潜哨戒機(P3C・P1)の基地化まで発表されています。つまり、自衛隊の南西シフト態勢下の、「陸海空+米軍」の最大の基地が決定―

実は巨大基地化だ

 さらにこう続ける。

 ―馬毛島の要塞化は「種子島の要塞化」なのです。単なる無人島の軍事化ではない(この点も誤解が多い。馬毛島のベースキャンプは種子島です)。重大なのは、この巨大基地に配置される自衛隊と米軍の要員。おそらく、米軍は100〜300人規模と推測されるが、自衛隊は合わせて数千人は下らないということです。人口3万5千人の種子島に数千人の自衛隊と米軍!―

 これが計画の全容と実態だ。防衛省はウソを前提に基地建設を強行する。

 宮古島でも、弾薬庫を小銃などの「保管庫」と偽っていたことが暴かれ、搬入されたミサイル誘導弾の一時撤去に追い込まれた。

 計画の全容と実態を正確につかみ、住民自治を対置し、闘わなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会



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