2019年04月26日 1573号

【みるよむ(515) 2019年4月13日配信 イラク平和テレビ局in Japan 市民を欺くイラクのメディア】

 イラクでは何十もの衛星放送テレビやラジオ、ソーシャルネットワークなどによって毎日大量のニュースが拡散されている。しかし、重要な情報の多くは権力者の意向でねじ曲げられ、市民を欺く報道となっているのが実態だ。2019年2月、サナテレビはメディアの報道についてバグダッド市民に意見を聞いた。

市民を欺く危険

 コメンテーターは「メディアは最も危険なものの一つだ」と呼ぶ。「ひどく市民を欺くメディア」が氾濫し、人びとを権力者の思うままに操作し支配しようとしているのである。画像では、米国のグローバル資本に有利な世論を形成するCNNや、スンニ派イスラム主義勢力の政治宣伝に利用されるアルジャジーラのロゴが映し出される。

 フェイクニュースにみながだまされているわけではない。最初に登場する芸術家は「人びとは自覚を持っている。名声を得るために、ウソや人をだますニュースを作りだす人がいる」と指摘する。この発言は、市民が自覚をもってフェイクニュースや虚偽を流すメディアを監視しなければならないという、視聴者への訴えでもあるだろう。

 あるメディア関係者は、市民を欺く情報を防ぐための討論会や法律の制定を呼びかけている。「15歳から25歳の若者がフェイスブックやインスタグラムなどSNSによって影響を受けている」と言う。やはり、深刻な問題なのだ。

 別のメディア関係者は「メディアを使って政党への支持をあおりたてるために数字が上下し、ある放送局は『100』と言うが、別の放送局は『200』と伝え」と市民が真実を見抜く必要性を語る。

フェイクの競い合い

 イラクでは現在「45の衛星放送チャンネルと50のラジオ局、数十におよぶ新聞、通信社、電子サイト、SNS」があるという。これらがことごとくフェイクニュースを競い合っているとしたら、大変な問題だ。

 巨大メディアやSNSが権力者の意向に沿った情報しか流さない現象は、アメリカや日本でも同様だ。

 市民は真実をつかみ自ら発信していかなければならない。サナテレビはそうした民衆のための情報を広げる市民メディアである。日本からも連帯を深めたい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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