2019年04月26日 1573号

【消費税増税は撤回だ(3) 社会保障財源は大企業・富裕層課税で 不公平税制 是正すれば38兆円】

 社会保障充実と財政再建のため消費税を32%に≠ニいう元財務官僚の論説が1月、経済誌『エコノミスト』に掲載された。過去には経済同友会が17%、経団連が19%の提言をしている。なぜ消費税だけが増税の対象とされるのか。消費税以外に財源は生み出せない≠フごまかしを暴く。

「社会保障のため」のウソ

 消費税法第1条と社会保障制度改革推進法第2条には、社会保障の経費に消費税を充てるとの規定がある。これを受けて政府は「消費税率の引き上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われます」(内閣官房HP)と「社会保障財源化」を強調する。御用学者も大手メディアも社会保障のために消費税増税が不可欠だと宣伝する。

 図を見てほしい。年金など社会保障の4つの経費は消費税ではカバーできず、15・5兆円の差額(スキマ)が生じている。これを埋めているのは「その他の収入」(所得税、法人税、国債など)だ。この状態で消費税2%増で生まれる5兆6千億円をすべて社会保障に充てると、これまでスキマを埋めていた他の収入が5兆6千億円余ることになる。

 「余った」お金はどこに行くのか。軍事費増、法人税減税に使われても「会計上の問題」は生じない。一般会計では消費税と社会保障経費を対応させていない。「社会保障財源化」とは予算編成上のキャッチフレーズであり、「法律で使途を定めたとしても会計制度はそうなっていない。消費税は実質的に『一般財源』と変わりない」(『経済』2018年6月号)。現に19年度予算では、消費税増税にあわせて軍事費大幅増が計上され過去最大となった。

 消費税を社会保障目的税にすればいい、との意見も根強くある。目的税にすると、消費税収とその対象となる経費を一般会計から切り離して独立採算制が原則の特別会計になる。現状でもスキマがあり、今後の高齢化に伴う支出増は不可避だ。消費税収で社会保障費をまかなおうとすれば、消費税を大増税するか、社会保障費を大削減する、さらには両方を同時に行うとなる。どれも負担増と社会保障制度破壊で格差と貧困を深刻化する。社会保障を消費税でまかなうことは誤りだ。

 歴史の中で積み重ねられてきた財政民主主義の予算原則の一つに「特定の収入と特定の支出を結び付けてはならない」がある。消費税の「社会保障財源化」や目的税化はこの原則からも逸脱する。市民の命と生存権を守るために必要な社会保障には、すべての財源を充てるべきだ。

税率を元に戻すだけで

 消費税が導入されてから19年度までにその累計額は397兆円になる。同期間の法人税減税で298兆円が減収となり、富裕層優遇の所得税・住民税減税で275兆円が減っている。これらの減税は消費税がなければ実行できなかった。つまり、法人税などの減税のために消費税は引き上げられてきたのである。

 だから、法人税などを以前の税率に戻すだけでも消費税増税分の財源を生み出せる。法人税率を安倍政権以前の水準に戻す(中小を除く)ことで2兆円、所得税・住民税の最高税率を元に戻すなどで1・9兆円を捻出できる。

 さらに、不公平税制の是正だけで約38兆円(「不公平税制をただす会」の試算)の増収が見込まれる。為替取引税や環境税などの新設も検討できる。消費税だけが財源ではない。不公平税制の是正などを優先させ徹底すれば消費税をなくすことも可能になる。

 消費税増税を強く求めてきたのはグローバル資本だ。ところが、その中心にいる自動車産業の団体である自工会(トヨタ社長が会長)は昨年9月、10%引き上げによる国内市場の縮小を懸念する声明を出した。これは、トランプ米大統領が消費税を「非関税障壁」と捉え、自動車関税25%引き上げを主張していることと無縁ではない。増税への「外圧」が「国際問題化」する可能性もある。

 生活破壊への市民の怒りに直面する安倍政権が、そうした「外圧」も口実に3度目の増税延期≠ナ衆参同時選挙に出る可能性を指摘する報道もある。ごまかしの延期ではなく、消費税増税は中止しかない。不公平税制をただし、軍事費を削り、消費税廃止を求めよう。 《終わり》



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