2019年04月26日 1573号

【普及しないマイナンバーカード/利用拡大狙う「3法案」反対/共通番号いらないネットが院内集会】

 すっかり忘れてしまった人も多いのではないだろうか。2016年1月から交付が始まったマイナンバーカードのことである。施行後3年以上たつマイナンバー制度だが、利用は一向に広がらない。

 昨年度中に8700万枚をめざしていたマイナンバーカードの普及は、12月時点の総務省発表で交付済み1564万枚、交付率12・2%。その多くは同カードを身分証として使う国家公務員といわれる。ワンストップで手続きできるという触れ込みのマイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)も、子育て分野の電子申請が可能なのは全市区町村の22%にとどまる。情報連携が即時に行えないため「必ず届け出に必要な書類をお持ちください」とPRしている有り様だ。銀行でもマイナンバー記入は嫌われ、口座への付番は2%ほどにすぎない。

 昨年10月に内閣府が実施した世論調査では、今後もマイナンバーカードを取得する予定のない人が53・0%、マイナポータルを利用したいと思わない人が62・2%を占めた。取得予定がない理由は「必要性が感じられない」「個人情報の漏えいが心配」など。実際、住民税の税額通知書にマイナンバー記載を強行し誤配達で番号が漏えいしたり、年金機構や国税庁のマイナンバー入力事務で違法な無断再委託により契約外業者に番号が流出したりといったトラブルが相次いだ。

 ところが政府は、市民の理解が得られていないこの現実を省みず、強引に普及を拡大しようと今通常国会に3つの法案を提出している。

 1つは、健康保険法等の改悪案。医療保険にオンライン資格確認を導入し、保険証に代えてマイナンバーカードを使う仕組みを作るとともに、医療・健康診断・介護のデータベースを連結し情報共有を図る。病院内でのカード紛失や、目視確認より時間がかかることによる窓口の混乱が予想され、プライバシー保護法制が未整備な中、情報の目的外利用の危険が高まる。

 2つめは、戸籍法改悪案。戸籍にマイナンバーを結びつけ、各地の法務局に保存されている戸籍・除籍の副本データを法務大臣が一元的に管理する体制を構築する。身分や出生地に関わる差別情報が蓄積された戸籍データのネットワーク化は、戸籍制度が抱える問題を固定化するものだ。

 第3に、行政手続きを原則として電子申請に統一する「デジタルファースト法案」。個人番号通知カードを廃止し、マイナンバーカードの取得を促す。スマホやiPadなどモバイル端末全盛の時代に、ICカードリーダーの必要な同カードの利用促進はおぼつかないが、市民のあずかり知らぬところに個人情報を集積し、カードを持たない人を非国民扱いする監視国家への道を敷きつめる狙いがある。

 3つの法案は委員会での1〜2回の審議を経て採決される可能性が高い。4月12日には「共通番号いらないネット」の主催で院内集会が開かれ、「マスコミもほとんど取り上げないが、今までと違うレベルでマイナンバー制度が拡大するおそれがある。何が問題か、きちっと訴えていこう」と呼びかけた。

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