2019年05月03日・10日 1574号

【衆院沖縄3区補欠選挙 オール沖縄・屋良候補が勝利 新基地ノーの民意は揺るがない】

 辺野古新基地建設が最大争点となった注目の衆院沖縄3区補欠選挙。4月21日即日開票され、オール沖縄が支援する無所属新人でフリージャーナリストの屋良朝博候補が7万7156票を獲得し、見事初当選を果たした。自民党公認で公明や維新から推薦を受けた元沖縄北方担当相の島尻安伊子候補を1万7728票差で破った。

ゼロ打ち≠ノ歓喜

 20時の時報とともにテレビ画面には「屋良氏当確」の速報が流れる。勝利を示すいわゆるゼロ打ち≠セ。屋良選挙事務所では、応援にかけつけた玉城デニー知事や多くの支援者たちが歓喜に湧き、ほどなくしてカチャーシーが始まった。

 屋良さんは「県民の民意が改めて強く示された。辺野古移設は普天間問題の解決策にならない。基地問題の抜本的な解決策をストレートに議論していきたい」と述べ、玉城知事も「屋良さんへの熱い支援は、民意を政府にしっかり伝え、対話による解決につなげてほしいというエールだ」と強調した。

 3区は辺野古新基地建設現地の名護市を含む。その名護市でも屋良1万2497票、島尻1万109票と2千票以上の差をつけた。メディアの出口調査では、最も重視した政策は基地問題が54%(4/22沖縄タイムス)。また、「辺野古移設」に反対は全体の61%、賛成はわずかに16%(4/22毎日)だ。3区の有権者が新基地建設に反対する屋良候補を選んだことで、辺野古埋め立てを強行する安倍政権に対し、再び「ノー」の民意を突きつけた。

 今回、玉城デニー知事の後継候補として出馬した屋良さん。当初は知名度で心配との声もあったが、守ってきた反基地の議席を引き継いだ。

 前日、沖縄市の打ち上げ式で屋良さんは「普天間(基地)は米軍の運用を変えるだけで、辺野古の海を壊さなくても返還可能」と、自身が新聞記者時代から20年余り米軍運用を研究してきた経験から断言した。今後、国会で新基地建設の「理由」そのものを打ち崩す厳しい追及が期待される。

 現地で闘う沖縄平和運動センターの山城博治議長も、屋良勝利に「県民の意思が揺るぎないものだと明確になった。全国的な支援の輪が広がっていくと期待したい」と語っている。屋良候補は翌22日早速、辺野古ゲート前を訪れ、「ここは原点。皆さんの気持ちを国会に持っていく。沖縄は絶対に負けない」と激励した。

 夏の参院選に向け大きな弾みをつけた。辺野古新基地阻止まで絶対負けられない闘いが続く。

 

またも女性殺害事件

 沖縄県民を悲しみと怒りに陥れた2016年4月28日うるま市での米軍属女性暴行殺人遺棄事件からまもなく3年。3区補選の直前に、またしても悲劇が起こった。

 事件発生は4月13日午前。北谷(ちゃたん)町桑江のアパートの寝室で会社員の日本人女性と米海軍の男性が血を流して死亡しているのが確認された。後に県警の調べで、米海軍の男が女性の首などを刃物で刺し殺害した後、自身もその後自殺した可能性があるとされた。自殺した容疑者は、在沖米海兵隊所属の米海軍3等兵曹ガブリエル・オリベーロ。名護市辺野古のキャンプ・シュワブに居住していた。

 亡くなった女性は交際していた容疑者に別れを切り出した後、待ち伏せされ自宅に押し入られて物を壊されたり、監禁や暴行、嫌がらせ行為を受け、米軍や警察に何度も相談しても止まらず悩んでいたという。さらに、女性は容疑者の母親からも捜査機関に被害を訴えぬよう要請されていた。

 事件前、米軍は容疑者に対し女性に近づくことを禁止する命令「MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)」を出していたが、容疑者は基地司令官から外泊許可を得て、事件前日12日の夜に被害者宅へ向かったとされる。さらに、容疑者は米兵らの勤務時間外の行動を規制する「リバティー制度」の夜間外出禁止規則に違反した可能性もある。禁止令や外出規制が実態としては機能せず、米軍や警察も女性から相談を受けていたのに結果的に事件を防ぐことができなかった。

基地は撤去以外にない

 玉城デニー知事は4月15日、在沖米軍トップのエリック・スミス四軍調整官などを県庁に呼び「3年前、米軍属による女性殺人事件が起きた中でこのような事件が起き、県民の尊い命が失われた。大変遺憾で激しい怒りを覚える」と抗議し、「米軍の綱紀粛正や人権教育が全く機能していない」と批判した。スミス四軍調整官は事件について「私が全責任を負う」と謝罪したが、リバティー制度の緩和については問題ないとの認識を示した。このリバティー制度、「もっと沖縄を楽しんでほしい」と今年2月に米軍の一方的な決定で規制を緩和していた。その矢先の出来事だ。

 17日、抗議のため上京した謝花喜一郎副知事も「なぜ接近禁止命令を出していた人に外泊許可を出したのか。(今回の事件は)守ることができたかもしれない命だ」と憤りを表明した。

 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会(高里鈴代代表)など女性団体の代表者たちは16日に会見し、「基地・軍隊は人間の心と身体を深刻なまでに破壊し、その暴力はフェンスの内と外とを問わない」として、米大統領や首相らあてに、沖縄からのすべての基地撤去を求める要求書を発表した。

 事件が発生する度に繰り返し言われる「米軍の綱紀粛正」など何の信用もできない。悲劇を繰り返さないためには、もはや直ちに米軍基地を撤去するしか方法はない。 (A)

 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS