2019年05月03日・10日 1574号

【北海道泊原発は廃炉しかない/敷地内にも沖合からも活断層】

 原子力規制委員会は2月22日に行った審査会合(電力会社が運転許可を申請した原発の審査)で、北海道電力泊原発1〜3号機の敷地内にある断層が活断層である可能性を「否定できない」とする見解を明らかにした。福島原発事故後の2012年5月に運転停止して以来、北電は「再稼働の条件」とされてきた「活断層でないことの説明」ができないままだ。

崩壊した北電の説明

 泊原発付近には、11本の断層が走るとされ、そのうち特に問題なのが「Fー1」「Fー4」の2つ。中でも1、2号機の真下を走るFー4断層について、規制委は「活断層」(12〜13万年前以降に動いた断層)でないことの証明を北電に対して求めてきた。Fー1断層は1号機の真下を走るわけではないが、規制委は活断層と認定すれば北電に追加の安全対策を求める構えだ。

 審査会合で規制委が問題としたのはFー1断層だ。北電は、この断層内の砂や火山灰の堆積状況から、地震に伴う断層は約33万年より過去の層にしか存在せず、約22万年前に噴出した火山灰層がその上に乗っていると主張、活断層に当たらないとしてきた。

 しかし、規制委は、北電が主張する火山灰成分が少なすぎ、年代判定の根拠に乏しいとして追加調査を指示。約4万年前に噴出したとされる火山灰の成分が断層のない地層上部から見つかったのである。

 断層が存在しない地層上部の火山灰層が22万年前のものだとする北電の主張に根拠がないことも、明らかになった。この火山灰層には年代の異なる様々な成分が堆積しており、分布は数万年前から100万年前まで幅広い。北電は、それらの平均値を機械的に算出して22万年前とでたらめな説明をしていたのだ。

科学誌論文に規制委動く

 人類が現れる以前から、地球は氷河期と間氷期(氷河期と次の氷河期に挟まれた温暖期)を一定周期で繰り返してきた。氷河期になり海氷が増えれば海の面積が減少し、間氷期になれば海氷が溶けるため海の面積が増加する。

 小野有五(ゆうご)北海道大学名誉教授と渡辺満久東洋大学教授は、直前の氷河期の末期に海水面が移動を繰り返しながら様々な年代の砂や火山灰などを押し上げたと主張。地層最上部に様々な年代の成分が混在することの根拠とした。人類にとって最後の氷河期は今から3万年ほど前であり、この時期に地震があったとしても海面の移動で地質が変化するため断層が残るとは限らない。最上部に断層がないから地震はなかったという北電の主張を突き崩した。

 堆積物の内容からそこが海や陸であった時代と照らし合わせて地層の年代を特定する。地質学者の最も基本的手法だ。

 2人は科学誌に自分たちの見解を論文として掲載、規制委員全員に送付した。「私たちの主張がすべて認められた」と小野さんは指摘(3/4記者会見)。科学的根拠に基づく市民の立場に立つ学者の粘り強い活動の成果だ。「規制委に私たちのような外部(非委員)の学者の意見を聞く窓口は設けられていない。でも学者は他の学者の論文は気になるもの。きちんと科学的根拠をもって説明すれば、規制委も無視できなくなる」と小野さんは自信を見せる。

胆振東部地震で新事実

 昨年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震をきっかけに新たな危険性も明るみに出た。泊原発から西の沖合15`にある「積丹(しゃこたん)半島西方断層」の終端部は泊原発直下まで延びる。ここが動く可能性があるのだ。

 胆振東部地震は「石狩低地帯東縁断層帯」が引き起こしたとみられる。震源地となった安平(あびら)町はこの断層のすぐ東側だ。同様に、積丹半島西方断層の周囲でもこの規模の地震が起きる可能性があると、小野さんは指摘する。

 これほど危険な状況なのに、泊原発では非常用ディーゼル発電機の端子の固定(ねじ止め)が不十分で、発電機から送電用の電気コードが外れる可能性がある状態のまま放置されていたことも判明している。9月の大停電当日もこの状態のまま迎えており、福島のような全電源喪失にならなかったのは単なる偶然だ。

 会社上層部でも現場でもこのような無責任がまかり通る北電に原発を委ねることはできない。即時廃炉しかない。

 
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