2019年05月03日・10日 1574号

【沖縄ジュゴンが死んだ/海草(うみくさ)藻場の埋め立て中止せよ/ジュゴン保護キャンペーンセンターが政府交渉】

 防衛省の環境アセスメントで確認されていたジュゴン3頭のうち1頭(個体B)が3月18日、沖縄島西海岸の今帰仁村(なきじんそん)運天漁港沖に死体で漂着した。残る2頭も、個体C(Bの子と考えられる)は2015年7月から、個体Aは昨年10月から、いずれも行方が分からなくなっている。

 辺野古新基地建設のための埋め立て工事でジュゴンが餌場とする貴重な海草(うみくさ)藻場を奪い、沖縄ジュゴンを絶滅に追いやってはならない、とジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)は4月19日、防衛省・環境省交渉をもった。

「工事の影響はない」

 防衛省に対しては、沖縄防衛局の設置した「環境監視等委員会」がジュゴンの生態を踏まえた議論をしていないことを指摘した上で、個体A・Cはどこへ行ったと考えているかをただした。防衛省はそれには答えず、「食(は)み跡調査によれば、個体Aは昨年10〜12月以降、嘉陽(かよう)海域の海草藻場を利用しなくなったが、この時期は護岸の造成など水中音を発する工事を実施していない。したがって、Aの行方不明は工事の影響とはいえない。個体Cは西海岸の古宇利島(こうりじま)沖から東海岸の辺野古沖まで広範囲に行き来していた。古宇利島沖については工事の影響は想定できず、Cが事業の影響で行方不明になったとはいえない」と工事の影響の全面否定に終始した。

 運搬船が航行する際に出す周波数の影響に関する質問にも「環境影響評価書で『水中音がジュゴンの行動に与える影響は小さい』と予測されている。船舶はジュゴンが確認されている区域に配慮し、岸から10`b以上離れて航行する。ジュゴンとの衝突回避のため見張りを励行している」とはぐらかす。では、船の出す音の調査はしているのか、と問うと、「観測していません」。

 Cの行方不明は、臨時制限区域が決定され、常時立ち入り制限を示すブイが設置され、トンブロックが投入され、ボーリング調査が実施されていった時期と重なる。Aの行方不明は、石材の海上輸送や土砂の投入が始まった時期と重なる。Bは運搬船の航路にあたる海域で亡くなった。基地建設工事とジュゴンの生息環境悪化とが同時進行していることは明らかだ。

 

ジュゴンの生きる糧

 SDCC国際担当の吉川秀樹さんは「“Accumulated effects”(蓄積された影響)という科学的な概念を使って議論しているように思えない」と批判する。生物が騒音や振動を受けると、影響が時間とともに蓄積していき、許容量を超えた時点で反応が現れる。防衛省は「われわれがやってきたのは環境影響評価の予測に基づく手続き」とし、影響の蓄積は頑として認めなかった。

 「ジュゴンが食べるのは海草(うみくさ)。コンブやワカメなどの海藻(かいそう)ではない」。交渉参加者の一人が指摘すると、防衛省担当者は「そんなに重要ですか。読み方の違いでしょ」。ジュゴンの生きる糧である海草藻場の大切さを全く理解していないことを露呈した。

 環境省交渉では、「予算は限られているが、南西諸島におけるジュゴンの目撃情報収集などの調査拡充を検討中。去年の環境省の調査で、波照間(はてるま)島で2頭目撃の情報もある」との回答が得られた。



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