2019年05月17日 1575号

【みるよむ(517) 2019年4月27日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの女性は 一夫多妻制を拒否する】

 イラク国民議会は、イスラム教の聖典「コーラン」に基づき、男性は4人まで女性と結婚できるという一夫多妻制を認める法律を制定した。2019年3月、サナテレビは女性への人権侵害そのものであるこの問題について、バグダッド市民にインタビューした。

 7世紀にまとめられた「コーラン」は、男性が「2人目、3人目、4人目の妻」を持つことを認めている。しかし、イラクでは、王制を打倒した1950年代以降政教分離が進み、一夫多妻制は認められなくなった。何よりイラクの女性が男女同権を要求して闘ってきた長い歴史がある。

怒りの声上げる女性たち

 女性たちはこの法律に怒りの声を上げる。最初の女性活動家は「あなたはこんな法律を実行しますか」と単刀直入に視聴者に問いかける。現代のイラク女性は「家族の中に新たに別の妻が入り込むことを受け入れることなど認めない」。そうした社会で何十年も暮らしてきたのだ。

 続いて登場する女性活動家も「男性が『2人目、3人目、4人目の妻』を持つことに対する支持なんてありません」と断言する。この女性は、一夫多妻制が男性が配偶者の女性やその子どもたちの人権と生活を踏みにじるものと指摘し、「性的な快楽のためだけで結婚するか、友人や親族の前で『自分は2人目の妻を持っている』と見せびらかすために結婚するものだ」と厳しく批判する。

若者が結婚できる社会を

 政府は、一夫多妻制を認める法律を制定する口実として、戦争によって未婚の女性や夫を失った女性が非常に多くなったことを挙げている。これに対し、ある大学教員は「若者が結婚する上での障害を取り除くべきだ」と主張する。現在、若者の多くが就職できず失業者となり、経済的事情から結婚が難しい状況がある。こうした社会構造を変革してはじめて結婚する若者も増えるのだ。

 一夫多妻制を認めるこの法律は、イスラム主義政党の支配力を強めるために導入されたものだ。サナテレビは、女性の人権を踏みにじるこのような攻撃に反対しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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