2019年05月31日 1577号

【維新丸山「戦争」発言/維新にも自民にも同類がウヨウヨ/改憲の目的は、やっぱり戦争】

 日本維新の会の丸山穂高・衆院議員が北方四島ビザなし交流訪問の最中に、元島民に向かって「戦争をしないと(島を)取り返せない」などと発言した。湧き上がる批判にあわてた維新の会は丸山を除名処分としたが、トカゲの尻尾きりの印象はぬぐえない。今回の暴言は、憲法改悪に突き進む安倍応援団の危険な正体を象徴するものなのだ。

平和原則を全否定

 問題の発言は5月11日の夜、国後(くなしり)島内の宿泊施設「友好の家」で行われていた懇談会の際に飛び出した。団長の大塚小弥太さん(89)が同行記者の取材を受けていたところに丸山が割って入り、議論を吹っ掛けた。

 「団長は戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか。反対ですか」「ロシアが混乱しているときに取り返すのはOKですか」と丸山。大塚さんは「戦争なんて言葉は使いたくない。戦争はするべきでない」ときっぱり否定した。それでも丸山は「でも、取り返せないですよ」「戦争しないとどうしようもなくないですか」とたたみかけた。

 丸山はその後、酒に酔って騒いだことは謝罪したものの、「戦争」発言については「あたかも私がそう思っていて押しつけるかのような話は間違い」「真意を切り取られて心外」と報道に不満をぶつけていた(5/13午前)。

 卑劣な言い逃れと言うほかない。今回の発言は丸山の持論である。事実、昨年4月の衆院外務委員会で質問に立った際に「なかなか領土が戦争や武力以外で返ってきたというのは本当に稀なケースだと思います」と述べていた。

 日本国憲法は「国権の発動たる戦争」や「武力による威嚇又は武力の行使」は「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(9条1項)とうたっている。そして国会議員は「この憲法を尊重し擁護する義務」を負う(99条)。「戦争による領土奪還」に賛意を求める者に国会議員の資格はない。

ネトウヨの安倍応援団

 戦後日本の平和主義原則を全否定する暴言を吐いた丸山穂高とは、どういう人物なのか。東京大学卒業後、経済産業省、松下政経塾を経て、2012年の衆院選に日本維新の会公認で出馬(大阪19区)し、初当選した。現在35歳。衆院沖縄北方問題特別委員会に所属し、今回の訪問団には「顧問」として参加した。

 ネトウヨ業界では売り出し中の「論客」で、その筋では「タブーを恐れぬ若きサムライ」と呼ばれているらしい(アホくさ)。ツイッター上でヘイト発言を連発。批判されると相手が一般人でも絡み続けることがよくある。

 「維新」の議員にはありがちなことだが、社会的弱者を切り捨てることを「改革」だと自慢している。つい最近の国会質問でも「外国人への生活保護支給」に異を唱え、ネトウヨ迎合紙の『夕刊フジ』に絶賛されていた。

 安倍応援団でもある。「共謀罪」法案の審議(2017年5月)では、質問中に「足を引っ張ることが目的の質疑はこれ以上は必要ない。ただちに採決に入っていただきたい」と大声を張り上げ、強行採決を促した。

 新自由主義と排外主義に凝り固まり、人としての思いやりや想像力が決定的に欠けている―。そんなネトウヨ脳の持ち主だからこそ、戦争で故郷を追われた89歳の大塚さんに、上から目線で「戦争しないとどうしようもない」などと言えるのだろう。

元島民たちの怒り

 丸山の暴言に北方四島の元島民らは「あまりに非常識」と怒りを募らせている。「千島歯舞(はぼまい)諸島居住者連盟根室支部」の宮谷内亮一支部長(76)は「元島民は、戦争に自分の人生や生活を振り回されてきた」「その自分たちに対して、戦争で島を取り返せ、と言うのは本当に無神経だ」(5/15北海道新聞)と憤る。

 宮谷内さんは国後島の出身。「私たちは、ロシア人から島を無理やり奪うようなことをするつもりは毛頭ない」と話す。ビザなし交流では、訪問先のロシア人に「領土問題が解決すれば一緒に住んでもいい」と言い続けてきたという。「相手のロシア人も自分と同じ気持ちだった。(丸山は)歴史や思いをまるで理解していない」

 元島民に共通の願いは自由に往来できる島々に戻すこと。そのために四半世紀にわたるビザなし交流などで、国を超えた人間どうしの交流を積み重ねてきた。それだけに丸山発言への怒りは大きい。「居住者連盟」の河田弘登志副理事長が「長い時間をかけてロシア人と信頼関係を築いてきたのに、ぶち壊された。国会議員もやめるべきだ」(5/14日刊スポーツ)と語る。

   *  *  *

 あきれたことに丸山は議員辞職を拒んでいるが、たとえ辞めたとしても一件落着とはいかない。彼と同様の発想の国会議員は「維新」にも自民党にも大勢いる。外交問題解決の手段として戦争という選択肢を保持しておきたい、あるいは戦争ができないから日本の外交力は弱いのだと考えているような連中だ。

 そんな安倍チルドレンたちが大量増殖し、改憲の旗を振る―。この国が戦争国家に向かっていることを丸山発言は示したのである。  (M)



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