2019年07月26日 1585号

【学校に行かない子どもの声から 内田良子さん講演会 不登校は存在をかけた主張】

 フリースペースひまわりは6月30日、子ども相談室「モモの部屋」の内田良子(りょうこ)さんを迎え、講演会「学校に行かない子どもの声を受けとめて今私たちにできること」と相談交流会を開催しました。大雨で足元の悪い中、29人の親、市民が参加し、地元の新聞の取材も受けました。

 内田さんは、心理カウンセラーとして「子どもの立場に立って親とともに考えていく」という立ち位置で現場の相談活動に携わって46年目です。この間に、文科省の対策は子どもを、家庭を追い込む方に変わってきた、と次のように語られました。

 90年代にそれまで「登校拒否」と言っていたのを行政が「不登校」と呼びかえたことで、子どものプロテスト(抵抗)が言葉から消え問題が見えにくくなっている。「不登校はどの子にも起こりうる」と言いながら、子どもに原因があるとしてきた不登校対策の誤りを認めていない。最近の学校の対応は早期発見・早期対応で子どもを休ませないというもの。3年前にできた教育機会確保法の背景には、安倍内閣の教育再生実行会議があり、それまでの文科省の対策が法律に格上げされ、はるかに厳しくなった。

働く前に休む練習を

 父親がひきこもっていた息子を殺害した事件では、息子は中高一貫校でひどいいじめを受けながら学校に行き続けていた。61万人のひきこもりの理由を調査すると、退職、人間関係、職場環境が70%以上、不登校からの継続は8・5%。労働政策の失敗で個人の問題ではない。大人になり働く前に、子どもの時に休む練習をすることが大切。休むことを知らないと、過労死や過労自殺の予備軍になってしまう。子どもは学校を休む権利があると知ると自己否定しなくなり、自尊感情を持てる、と強調されました。

 最後に、不登校は子どもの存在をかけた主張であり、こういう人間らしい子どもを大事に守り育てる社会であってほしい、と訴えられました。

 参加者からは「休む練習をするという発想はなかった」「なんとしてでも行かせなきゃというプレッシャーが軽くなった」「不登校の子どもの権利宣言を生徒に紹介したい」などの感想がありました。

 不登校は働くことや社会とつながっています。だからこそ、市民が情報を集めて発信・共有し、意見を言うことで、子どもをひとりの人間として尊重する学校や社会に変えていくことが大切だと改めて思いました。

 2019ZENKOin東京の第9分科会「戦争のための教育はいらない!教育市場化・公教育解体を止めよう!」(7月28日<日>9時半〜 日本教育会館)でも報告し、深めたいと思います。

(大阪・フリースペースひまわり・小川裕子)

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