2019年08月16・23日 1588号

【ZENKO社会保障分科会/人として尊厳ある生活へ 国、自治体に声を上げる】

 ZENKOin東京では「軍事費削って福祉に回せ! 介護保険大改悪と闘い、尊厳ある暮らしを」と題した分科会で、社会保障、介護問題が論議された。大阪・枚方(ひらかた)市の前市議の手塚隆寛さんに報告を寄せてもらった。

 2018年度予算で121兆3000億円の社会保障費が40年度には188兆2000億円に増えると厚労省は試算する。高齢化が進み、年金受給者が大幅に増え、医療・介護の需要も大幅に伸びる。

 安倍内閣の骨太方針2019は「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」と強調する。少々のことは自分の責任で、と国の責任を一層後退させ、給付の削減と自己負担増、利用抑制を進める。端的に表したのが、年金だけで老後の生活は保障できない。2000万円の貯えが必要≠ニの金融審議会報告だ。

改定のたびに悪化

 介護保険は00年の発足以来、保険料の増額、支給対象の削減、自己負担増が改定のたびに行われた。先の改定では、要支援の人の生活支援を介護保険から外して地域支援事業に移し、自己負担額を1割負担から所得によって2割、3割にし、介護保険料も引き上げた。発足時全国平均月額2911円の保険料は、19年度は5869円、25年度は7200円と試算されている。

 次期改定では、要介護1、2の人への生活支援を介護保険から地域支援事業へと移すこと、現在は無料のケアプラン作成費用を有料化することなどが検討されている。

 さらに、介護からの「卒業」、介護認定件数の減少などで「成果」を上げた地方自治体は交付金で優遇し、逆に介護保険料の減免のために一般財源を使った自治体には交付金を減額するなど、国は利用抑制へ圧力を強めている。

 ZENKOワンデーアクションとして7月26日に行った厚労省交渉で、介護保険給付の公的支出の割合(現在国25%、地方自治体25%、保険料50%)を増やすことを強く要求した。対応した職員は法律で決まっているとの回答に終始。公的負担増で制度を充実させる気など全くない。「介護保険料、減免などは保険者(自治体)の裁量で行える」「自己負担の増額で、サービス利用が減ったという資料はない」と回答。いずれも、実態を無視するか、歪曲する答弁で、参加者から怒りの追及が続いた。

家族・事業者がともに

 このような情勢と取り組みをふまえて今回の社会保障分科会は行われた。

 参加者は、小規模介護事業所の関係者、ケアマネージャー、親の介護を行っている人など。「介護報酬の改悪で、9割以上の稼働がなければ採算が取れない。それでも利益が出るわけではない。正職員にも月20万円の賃金を保障できない」「総合事業以降で要支援者に必要なサービスを届けられなくなった」「人手不足が改善できない」「研修や定期的なカンファレンス(介護現場の援助者が行う会議)ができる時間的余裕がなく人材育成ができていない」など、小規模事業所の厳しい実態が次々に報告された。

 介護保険改悪の動きに対して、利用者の家族や事業者が共同して声を上げること。そのためにネットワークを広げることが確認された。

 決議案の討議では、▽国は交付金などで自治体を縛っているが、一方で「介護保険料は自治体の裁量」と言っている。一般財源からの繰り入れを行おうとしない自治体に対し「自治体の裁量」との国の答弁を手がかりに独自減免を求める運動を強めること▽要介護1、2の介護保険からの除外やケアプラン作成の有料化に反対の声を上げること▽勤続年数にかかわらずすべての介護職員の待遇改善を行うこと―などを確認した。

 社会保障と消費税率引き上げをセットにするのでなく、所得税や法人税の最高税率の引き上げ、配当所得の累進税化などで、社会保障の公的拡充の財源はある。

 「誰もが人として尊厳ある生活を送る」―これを保障するのが社会保障の原点だ。そのことを改めて確認し、運動のネットワークを広げたい。

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