2019年09月06日 1590号

【DSA大会現地報告(3) ゆるぎない地域の信頼築き 3万5千人ストで権利拡大】

 アメリカ民主主義的社会主義者(DSA)の隔年大会(8/2〜8/3)では労働運動や文化活動の取り組みも注目を集めた。その一端を紹介する。

 大会が開催されたアトランタ市内には労働組合のあるホテルが二つある。会場のウェスティン・ピーチトゥリー・プラザホテルはその一つで、2013年にUNITE―HERE(注)が従業員の組織化に成功し、経営側と労働協約を締結している。組合員にはDSAの活動家も多く含まれているとのことであった。

 開会集会では、同ホテルの労働組合を代表してUNITE―HERE第23支部長が歓迎のあいさつを述べた。アメリカでは、一般にホテル、レストラン、外食娯楽産業等の労働者は、顧客からのチップがあることを前提に基本給が低く抑えられている。支部長は「このホテルではチップ不要だ」と堂々と述べた。

各学区で戸別訪問

 大会期間中、午前、午後の決議案討議が始まる前の時間帯で、ゲストスピーカーが連帯あいさつした。その内の一人が、今年1月に大規模ストライキを成功させ、教員にも地域住民にも多くの権利を勝ち取ったUTLA(United Teachers Los Angeles、ロサンゼルス統一教組)副委員長セシリー・マイアートクルーズさんだ。ロサンゼルス全域で3万5千人の教員がストライキに突入したこの闘いは、日本でも大きく報じられ、全米でも注目された。

 この壮大な闘いは、決して一夜にして実現したものではない。セシリーさんは「4年をかけて市内に存在する925の公立学校を回り、組合員の要求を聞いた。また、各学区の地域に入って戸別訪問を組織し、保護者や地域住民に自分たちの要求をわかってもらう活動を続けた。同時に地域住民の様々な要求に耳を傾け、ともに行政当局に対して働きかけていく関係を作ることを心がけた」と語る。

 こうした地道な活動によって、ストライキ突入時には、3万3千人の保護者、生徒、地域の支援者が学校のピケットラインに駆けつけた。「これまで教員ストに対して、高給取りがさらに貪欲な要求をする≠ニ宣伝し分断した当局も、今回は私たちを分断することはできなかった」と強調する。ストライキ決行中の6日間、毎晩保護者と地域支援団体が、ロサンゼルス市教育委員と民営化計画の受注業者宅への抗議行動を続けた。学級定数の引き下げ、テスト漬けの軽減、移民保護など、生徒と保護者が日々の生活で直面する課題を前面に掲げ、大きな成果が勝ち取られた。

 DSAロサンゼルス支部はスト決行中連日220人を動員し、ピケットラインに必要物資を届けるなど精力的に支援行動に取り組んだ。DSAが教員、保護者、生徒、地域団体との間に、ゆるぎない信頼と連帯関係を築いていることがうかがわれた。

歌で闘いを一つに

 大会最終日の午後、ニューヨーク支部代議員として参加していたアニー・レビンさんと話すことができた。彼女はDSAニューヨーク支部で「連帯して歌え」(Sing in Solidarity)という合唱隊を組織し、デモやストライキの現場、集会やコンサートなどで闘いの歌を歌っている文化活動家だ。大会期間中も2日目夜の国際連帯の夕べで、ステージに上がって『インターナショナル』の合唱をリードしていた。まだ結成して日の浅いグループだが多くの若者が結集している。

 アニーさんは言う。「コーラスグループ『連帯して歌え』のメンバーは、歌を通じて社会主義者の輪を強化するために自分たちの声を使います。私たちはまた、移民キャラバンや反人種差別行動を支援する社会的な正義をめざす運動団体へのカンパを募る活動もしてきました。2017年、DSAニューヨーク支部で始まったこの合唱隊は、国際的な革命歌の豊かな伝統からレパートリーを増やし、自分たちの任務として、文化と歌を通じて反資本主義の音楽を広め、国際連帯を築き、労働者、被抑圧者の闘争を一つに束ねることを目指しています」 。

 アニーさんは、文化活動の分野でも具体的な国際連帯活動を求め、目を輝かせてグループの紹介をしてくれた。
(注)UNITE―HERE約30万人を擁する米国とカナダの労働組合。主にホテル、食品サービス、洗濯、倉庫、カジノゲーム業界の労働者を組織している。

(ZENKO広島・日南田成志)

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