2019年09月13日 1591号

【2019年8月24日配信/イラク平和テレビ局inJapan/ 若者・女性がイラクの社会を変える】

 2019年7月28日、第49回平和と民主主義をめざす全国交歓会(ZENKO)第1分科会でイラク労働者共産党サミール・アディル書記長は、膨大な失業者が発生し社会サービスの崩壊が深刻化するイラク社会を変える若者と女性の取り組みを報告した。

 イラクでは福祉も、医療も、教育も切り捨てられ、若者の失業率は40%に及ぶ。これに抗議する10代から30代の多くの若者が行動に立ち上がっている。

 しかしこの闘いには弱点もある。散発的な決起にとどまっていることだ。若者の中に個人主義が広がり、それぞれ「自分がリーダーだ」と思い込んでいる。政府がまき散らす「組織は個人の自由を奪う」という思想が影響しているからだ。

 その一方で積極面がある。無神論、政教分離、マルクス主義が支持されていることだ。イスラム教の宗教支配、資本主義社会の格差拡大と搾取を克服するのはマルクス主義だと考える若者が増えている。

 若者の活動家を集めて3回の円卓会議を開いた。そこでは1991年のイラク北部クルディスタン労働者の蜂起の経験を紹介した。工場などに労働者の組織を作って抗議行動を成功させた。意識的に組織化すること、全国的な運動組織に発展していくことが展望であることなどを示した。さらに、街頭行動には女性がほとんど参加していない現状を問題にした。

 円卓会議の効果はサミールさんが見せた画像に明確に表れていた。今年の3月8日の国際女性デーはバグダッドで初めて女性のデモが実現。この画像に分科会の会場から拍手がわいた。

 さらに4つの主要都市でメーデーのデモが実現し、労働者の結社の自由(組合結成の権利)や非正規労働者の正社員化、雇用機会の拡大と失業保険の要求を掲げた。このデモにはフランスの「黄色いベスト運動」に連帯して黄色いベストを着てデモに参加する女性労働者の姿が目を引いた。

 第1回円卓会議の参加者は24人。女性は1人もいなかった。第2回では45人中8人が、そして第3回には65人中20人が女性だった。イラクの社会状況に大きな変化を生み出したのだ。

 サミールさんたちはイスラム政治勢力の暴力や米国の軍事支配に対抗して労働者、若者、女性、市民の権利を守る闘いを進めてきた。その彼らが掲げる「自由、平等、パン」の要求こそが、今年のZENKO議論の中心となった民主主義的社会主義の基本なのだと思う。

 イラクでも石油資源を支配するグローバル資本とそれと結託する政府に対抗して社会を変革する社会主義の運動が高まっている。イラクの市民・労働者に日本から連帯していきたい。

(イラク平和テレビ局inJapann代表 森文洋)



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