2019年09月27日 1593号

【新バージョン戸別訪問スタート/人に語ることは自分が学ぶこと/地域の声を掘り起こす力に 大阪市城東区】

 貧富の格差が極端に拡大する米国社会では、不満、怒りが渦巻いている。その中で、期待を集めているのがアメリカ民主主義的社会主義者(DSA)だ。DSAは、貧困層にも医療、教育を保障する無料化を実現しようと、地域の人びとに働きかける戸別訪問活動で政策への支持を広げている。このDSAに学んで「平和と民主主義をともにつくる会・大阪」(代表山川よしやす)を中心としたメンバーが9月14日、新たな戸別訪問活動を試みた。説明資料を整え、会話を事前に練習し、さあ訪問。その成果は…。

役にたつ予行演習

 訪問に出かける前に、マニュアルをもとに予行演習―DSAのノウハウの一つだ。初めて訪問活動を経験するメンバーの不安を取り除く上でも大切な練習だ。

 「関目6丁目の山川事務所の〇〇です」―〈山川事務所って何?何か売ってんの?と思われないか〉。訪問時のあいさつの仕方から意見が出る。「何の用か」といぶかしげに目的を探る相手の疑念に一言で伝える工夫がいる。インターフォンごしの会話では長いフレーズは通用しない。

 「お困りなことはありませんか?」だけでは対話は続かない。〈国や市に要望書を出していること、そこに意見を反映させるので話を聞きたいと訪問の目的を明確に伝える必要がある〉とマニュアルを補強する意見が出る。マニュアルが練り上げられていく。

 訪問の目的の一つは、会の活動報告「山川通信」の読者獲得。4年先の市議選勝利をめざす山川さんの支援者につながるからだ。2つめは署名協力。「軍事費よりも社会保障の充実を」と「カジノはいりません!」の2種類。会が訴える政策への共感を引き出せる。3つめは定例会などへの参加要請だ。

 暮らしの不安、政治への不満・怒りを共有し、解決するための政策を示す。行動を促す。一人、二人と、ともに行動する人が増えていくことで地域が変わっていく。そんな思いをもって、さあ、訪問だ。

訪問報告に拍手

 <ピンポン>。インターフォンを押してから間がある。事前に練習はしたものの緊張する。30戸ほどある3階建てアパート。留守宅ばかりが続いた。今度も…。「はい」と声がした。若い男性が玄関戸を開けてくれた。「山川事務所の…」とあいさつから開始だ。

 今年、新卒採用。訪問したメンバーと年齢は近い。賃金や労働条件、正規、非正規など、話の糸口を探る。不満や要求を聞き出そうとするも思い通りにはいかない。山川通信や持参したものは受けとってもらえた。署名は、「説明聞いてすぐには書けない」と保留。誠実な性格に好感が持てる。是非、継続して訪問したいと思ったが、研修期間が明ける10月には、関東方面に転勤するという。残念だ。

 2〜3人が組になって、訪問。対話をする役、資料や署名、配布物の準備をする役と手分けができる。この日は9組が1時間半ほど行動した。行動後はまとめだ。各組が成果を報告。283軒を訪れ、22軒で対話ができた。「花粉症薬を保険から外して全額負担させるのは許せない」「国民年金が少なくなる。苦しい」「消費税が上がって大変。3度の食事を2度にしている」―高齢者から生々しい生活実態が訴えられる。目的だった山川通信の読者は10人、署名も12筆(カジノ反対は11筆)協力が得られた。

 訪問活動の成果は協力者が得られることばかりではない。メンバー自身が得るものも大きい。「カジノを規制するならパチンコも」「韓国や中国に対抗上、(軍事費は)要るで」「増税は必要なことでは」―そんな相手とどう話すのか。

 初めて訪問活動に臨んだメンバーは「セリフはすべて飛んでしまった」という。「相手の意見を聞くことは難しい。こちらの主張もしたいし、探りながらの会話だった」と振り返る。自分と違う意見をどう聞くのか。違いはどこにあるのか。これを考えるプロセスが、自分の考えをより洗練するきっかけになる。

 別のメンバーは「主張のポイント、軸を自分で整理することが必要」と思いを述べた。「福祉国家をめざすことを軸に体系的に、何が問題なのか、どうしてなのかと自分のものにする学習意欲につながる」と考えた。

 違う意見を言い負かすことが目的ではない。生活実感から生まれた考えを否定することはできないからだ。その生活実感を解きほぐし、問題を解決できる政策があることを伝える工夫をより練り上げることだ。「言いたいことは山ほどある」「みんなおとなしすぎる。他の国ではデモとかしとるで」。訪問先で聞いた言葉が励みになる。

 月に1度の一斉訪問活動。次回は10月12日に行われる。





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