2019年10月04日 1594号

【1594号主張 東電被告「無罪」誰も認めない/怒りを一つに団結まつりへ】

政権忖度の不当判決糾弾

 東京電力福島第一原発事故を引き起こし双葉病院入院患者ら44人を死亡させたとして、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人に対し、東京地裁(永渕健一裁判長)は無罪判決を言い渡した。安倍政権の原発推進政策を忖度(そんたく)した不当判決であり、断固糾弾する。

 争点は、大津波を予見できたか(予見可能性)と事故を回避すべきだったか(結果回避義務)。検察官役の指定弁護士は、最大15・7bの津波試算が被告に報告された2008年時点で大津波を予見できた、防潮堤設置などの対策工事や原発運転停止を行い事故を回避すべきだった、と主張。37回にわたる公判では当時の東電社員などの証言を含め数多くの証拠を通じて3人の有罪を立証した。

 しかし、判決は、都合の悪い事実はすべて無視し、被告は予見できなかった、原発を止めるしかなかったが困難だった、と無罪を結論づけた。

被害者、市民は認めない

 こんなでたらめな判決が認められるわけがない。

 政府の地震調査研究推進本部は02年、福島沖でマグニチュード8・2前後の津波地震が発生する可能性を予測した「長期評価」を公表した。東電の担当者は08年3月、「最大15・7bの津波が原発を襲う」との試算を得て、上層部に対策を迫った。被告3人も報告を受けていた。ところが、判決は「長期評価」について、信頼・具体性に合理的な疑いが残ると切り捨てた。原発推進の妨げとなる「長期評価」の公表を遅らせ、内容を一部変更させるなど圧力をかけてきた内閣府を追認する、まさに忖度判決だ。

 しかし、避難者らが民事訴訟で争っている約30件の原発賠償集団裁判のうち、これまで9地裁・支部で出された12件の判決は、いずれも「長期評価」の信頼性を認めるなどで東電に損害賠償を命じている。加えて、多くの判決では「国も津波を予見できた」として国の責任も認めた。

 刑事訴訟でも、予見可能性を認定させ、東電と国に責任を取らせなければならない。控訴を求め、有罪判決をかちとる闘いを強めるとともに、これと一体の賠償訴訟や住宅追い出し阻止の闘いなどで被害者の救済を実現しよう。

韓国、沖縄、福島と連帯

 原発、軍拡、新自由主義を推進する安倍政権下では司法も腐敗し、被害者の人権を守り救済することは容易ではない。グローバル資本による搾取と人権侵害、民主主義破壊は拡大し、苦難は深くなる一方だ。しかし、被害を受ける「99%」の市民・労働者が怒りを一つにし団結して闘えば、平和で豊かな社会を実現し、尊厳ある人生を切り拓くことは可能だ。

 その鍵は、日韓をはじめ世界の市民が連帯し排外主義勢力、戦争勢力を封じ込めること、グローバル資本に課税強化し賃上げと生活改善を実現することにある。

 韓国、沖縄、福島の民衆と連帯し、東アジア平和構築・改憲阻止、大幅賃上げ・社会保障拡充、全原発廃炉・再稼働阻止、そして、すべての被害者救済を掲げ、あらゆる怒りと闘いを団結まつり(10・20東京、11・4大阪)に結集させよう。

   (9月22日)
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