2019年10月04日 1594号

【マイナンバーカードなどいらない 公務員への取得強要は違法 市民・職員の拒否で制度を破綻に】

 自治体職員にマイナンバーカードを強制的に所持させ、ショップ店員よろしく市民にカードを勧める?! 安倍政権による公務員へのマイナンバーカード取得勧奨方針は、事実上の強制であり違法だ。カードを取得せず、戦争国家を支える監視社会をつくりだすマイナンバー制度を破綻に追い込もう。

そっぽ向かれた末に

 安倍政権は、遅々と進まぬマイナンバーカード(以下「カード」)の普及を一気に拡大させるため、デジタル・ガバメント閣僚会議(6/4)で「普及と利活用促進方針」を決定し「骨太の方針2019」に盛り込んだ。

 16年1月から交付開始されたカードの取得率は、1751万枚(8/4時点)で人口の約13・7%にとどまる。それを今後3年余り(22年度中)でほとんどの国民所持へ、1億枚以上交付しようとする無茶な方針だ。政府の当初目標(今年3月末まで8700万枚)を大きく下回り、このままでは住基カードと同様に破綻しかねないからだ。

 その突破口が公務員への取得強要方針だ。地方公務員の一斉取得については、21年3月から本格実施されるカードの健康保険証利用にあわせカード取得強要が方針化された。

 政府は、都道府県と市町村に対して2つの総務省通知(6/28)を発し、主に5点を指示。(1)公務員の健康保険機関である共済組合員(正職員)及びその扶養者に対して、事前に氏名等印字した申請書を配布し20年3月までに取得勧奨(2)20年4月新規採用予定者に対する入庁前取得勧奨(3)共済組合員でない非常勤職員への取得勧奨(4)総務省から各自治体に対するカード取得状況の照会(6月、12月、3月)及び所属部署でも状況を把握し未申請者に適宜勧奨(5)職員がすべての来庁者に対してカードの申請勧奨及び申請窓口への誘導を実施する―というものだ。

 また、市民に対しては総務省の「工程表」に沿って、他の行政機関や企業、病院、店舗、自治会などに職員が出向いて申請を受けるなど「カード交付円滑化計画」を各市町村に作成させ、進捗状況の報告を求めることになっている。

 この点、政府が「トップランナー方式」として自治体への地方交付税の差別的な傾斜配分を行ない業務の民営化推進を自治体当局に強要しているように、今後カード取得率が芳しくない自治体には同様の財政誘導措置の可能性もあり得る。まさに、役所を起点にした一網打尽とも言うべき取得強要策だ。

違法だらけの政府方針

 今回の政府方針は、問題だらけで違法だ。

 第一に、本来、カード取得は個人の自由であり義務付けはないにもかかわらず、職場を通じて勧奨し、立場の弱い入庁前の新規採用予定者や翌年度の継続雇用に不安を抱く非常勤職員にまで勧奨する。これは、自治体職員に対し極めて強い心理的圧迫を感じさせる事実上の強制だ。

 第二に、共済組合の保有する個人情報を、カード申請書作成のために本人の同意を得ることもなく目的外使用していること。

 第三に被扶養者も含めたカード申請・取得の有無の調査は内心の自由の侵害であること。

 第四に、すべての来庁者に対して自治体職員がカード取得を勧誘することは個人の自由の侵害であり、憲法遵守を宣誓した公務員に行なわせることは違法そのものだ。現実には市民の反発を招き、事務的にも混乱を招く事態が想定される。

強制などできない

 この政府方針を受けて、すでに全国の自治体では職場で所属長による「カード取得」の勧奨が始まっている。

 しかし、今回の普及方針はあくまで自治体に「協力」を求めるだけで、どう取り組むかは自治体の判断なのだ。事実、総務省は「強制しているつもりはなく『取得の勧奨』である。あくまでお願いする立場」と回答(7/23)している。さらに、省庁からの通知は地方自治法上「技術的助言」であり、従うかどうかは自治体の判断だ。9月の各自治体議会でも議員の質問に対し、自治体当局は「強制ではなく取得しないことで不利益はない」と答弁している。

 今回の政府方針を許すか否かの鍵は自治体当局と職員が握っている。自治体当局は政府の意のままに従う必要はないし、自治体職員は明確に拒否できるのだ。

 そもそもマイナンバー制度は、全国民と定住外国人の情報を一元管理することにより戦争国家を支える国民への監視社会をつくりだすもの。プライバシー権(憲法13条人格権)を侵害する違憲の国民総背番号制度なのだ。

 自治体当局を追及し、市民や職員が勧奨を拒否しカードを持たないことで、憲法違反のマイナンバー制度を破綻に追い込もう。



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