2019年10月04日 1594号

【2020年度概算要求/ミサイル・宇宙関連中止で/保育所5万人分が可能】

 9月5日、財務省は2020年度政府予算の概算要求総額は過去最大の104兆9998億円と発表した。中でも、グローバル資本のための「成長戦略」や新たな軍拡などに重点配分する「新しい日本のための優先課題推進枠」と銘打った「特別枠」要求は、4兆3416億円に膨らんだ。

軍事費最大5.3兆円

 メディアは「高齢化に伴う社会保障費の増加」と厚生労働省予算を大きく報じる。だが、事実は高齢化による自然増分さえ削る。重大なのは省庁中5番目に多い防衛省が過去最大の5兆3223億円を要求したことだ(表)。



 第2次安倍政権発足から8年連続で前年度を上回り、15年度からは6年連続で過去最大の更新を続ける。ここにはSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)関係経費や米軍再編関係経費など、額を示さない「事項要求」分は上げられていない。19年度予算と同水準で計上されれば、5兆5千億円台にもなる。

 際立った特徴は、少し前まで「専守防衛」の建前で要求を控えていた先制攻撃、侵略兵器のオンパレードだ。

 「新しい日本のための優先課題推進枠」として、海上自衛隊護衛艦「いずも」の空母への改修費として31億円を計上。搭載する米国製最新鋭ステルス戦闘機F35B6機分は846億円、関連経費236億円を加えると1082億円に達する。航空自衛隊のF35Aも3機310億円、関連経費は482億円だ。最終的にはF35A(116億円)を105機、F35B(141億円)を42機導入を計画。総額は1兆8千億円を超える。

 また、先制攻撃のためにF35Aに搭載する巡航(スタンド・オフ)ミサイル106億円、同じくASM3(改)は開発だけで161億円。地球の裏側にまで派兵するための空中給油・輸送機KC46Aを新たに4機1121億円。

 朝鮮半島をめぐる緊張緩和の進展で配備の名目が失われているにもかかわらず、弾道ミサイル関連経費はなお1163億円。地上配備迎撃ミサイル「イージス・アショア」は、候補地とされた秋田・山口の反対を無視し、関連経費122億円を盛り込んだ。

 さらに、全く新たな攻撃能力となる宇宙関連経費524億円、サイバー・電磁波攻撃関連238億円と、大軍拡はとどまるところを知らない。

予算は市民生活に回せ

 こうした侵略のための兵器など市民には全く必要ない。直ちに計上を中止し福祉・教育予算に回せば、どれほどのことができるか。(表)

 18年10月の保育所待機児童数は4万7198人(厚労省)だ。保育所および認定こども園1人当たりの建設費を約285万円(独立行政法人「福祉医療機構」)とすれば総額約1345億円となる。弾道ミサイル関連経費と宇宙関連経費を中止すれば、全員分をはるかに上まわる予算措置が可能だ。

 生活保護基準引き下げにより18年10月から3年間で160億円が削減され、受給者の命を脅かしている。ASM3ミサイルの開発費1件で引き下げ分がまかなえる。

 若者を苦しめる日本学生支援機構の奨学金延滞分(3か月以上滞納)は2398億円(17年度末)に上るが、20年度のF35、空中給油機をやめるだけでもすべて帳消しにできる。

 侵略兵器を削り、切実な福祉・保育・教育などを充実させることこそ、未来の日本社会のための優先課題≠セ。

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