2019年10月04日 1594号

【議会を変える、市民と変える 子どもたちは社会の宝 京都府向日市議 杉谷伸夫】

 幼児教育・保育無償化の10月実施を目前に、市町村の現場では混乱が起きている。その原因の1つが給食費を無償化対象から外したことだ。

 従来保育所では、給食費(副食の食材費、以下同じ)を含めて保育料としていたが、今回の無償化に際して、国は、給食費は原則無償化せず保護者負担とした。そして給食費の基準額を月4500円としたが、この金額が現実(向日市の保育所では月7000円前後が多い)と全くかけ離れた低額なのだ。

 10月以降、民間保育所は給食費を保護者から徴収し、これまでの保育料から4500円を差し引いた額を国・自治体から補助金として受け取ることになる。だから民間保育所の収入は変わらない。しかし、現実にかけている食材費よりはるかに低い額を給食費として設定することに困惑が起きている。

 すでに複数の民間保育所が10月から給食費の値上げを行う予定であり、今後保育所の給食費は間違いなく値上がりしていくだろう。

 また給食費の保護者負担により、このままでは保育無償化の恩恵を全く受けない世帯や逆に負担増となる世帯も多数でてくることが明らかになった。向日市では住民税非課税世帯の保育料は4500円。現在これには給食費も含まれる。それが10月以降は、保育料はゼロになるが給食費が実費負担となるので恩恵は全く無い。給食費が値上がりすれば負担増となる。

 その他、京都府が独自に国の制度を補って第2子の保育無償化を行っている中間所得層の世帯などでは、給食費がまるまる負担増となる。これについては、京都府と向日市が制度を拡充して保護者負担が増えないよう対策をすることにした。

 このように、安倍政権の人気取りで突然方針化された幼保無償化の制度の不備が現場に混乱を招き、自治体と現場が尻ぬぐいしている。

 政府は「給食費の保護者負担」になぜこだわるのか。子どもは社会全体の宝であると思えば、すべての子どもたちに質の高い給食を無償で提供することに、何の抵抗もないはずだ。それを拒否するのは、「子育ては家庭の責任」という価値観を固守したい思想があるからだろう。幼児の給食に対してさえ無償化を拒否し、「実費負担」=自己責任を求める今の日本社会で、子どもを産み育てる安心感を持てるだろうか。

 そう考えると、給食費の無償化は、子どもたちを社会の宝と思える地域を創っていく課題でもあると改めて思っている。
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