2019年10月11日 1595号

【沖縄北部 本部港は軍港にさせない 市民の団結が米軍の使用阻む 法廷でも続く正念場の闘い】

民間港の使用を通告

 9月17日、沖縄北部・本部町(もとぶちょう)の本部港で、米軍車両の港湾使用をめぐって町民、市民団体、全港湾労働者100人が米軍・沖縄防衛局と10時間もにらみ合うという攻防があった。本部港は名護市安和(あわ)の琉球セメント桟橋、本部町塩川港での土砂搬入阻止の闘いの現場から車で5分弱に位置する民間の港だ。

 米軍は9月10日、沖縄県に対し17日と21日に本部港を使用すると通告。これまで県は米軍による民間港の使用は緊急時以外は認めない姿勢を貫いてきた。今回も、3度にわたり使用しないよう自粛を求めたが、応じなかったのだ。

 米軍は現在、本部町の対岸にある伊江島での訓練の比重を高めている。ジェット噴射の超高温にも耐えられるLHDデッキ工事を完成させ、オスプレイやステルス戦闘機F35Bによる模擬空母への離発着など辺野古と高江ヘリパッドを結ぶ新たな訓練ができるようめざしている。今回も、パラシュート降下で負傷した海上の兵士を救助する訓練のために救助用ボートを伊江島に搬入するとして、本部町の港湾使用を通告してきた。


米軍車両前に座り込む

 17日午前7時前、「オープンウォーターセーフティーボート」と呼ばれる大型の救助用ゴムボートをけん引した米軍車両が本部港に姿を現わすと、かけつけた市民らは車両の前に立ちはだかり、「米軍の港使用反対」とプラカードを掲げ座り込みで港内への搬入を阻止した。

 軍事利用は絶対許さないとの思いで大宜味(おおぎみ)村から儀保昇さんや奥間政則さんらも駆けつけ、阻止行動に加わった。全港湾沖縄地方本部の組合員、本部町民、市民団体の粘り強い奮闘の結果、ついに米軍は入港を断念。夕方午後5時前に撤退した。多くの市民の力で米軍を追い返した。

 「本部港が使用されれば沖縄の港はすべて軍港になる。今日は団結の力を見せつけた」と山城博治沖縄平和運動センター議長は、勝利のシュプレヒコールをあげた。

 一方、河野太郎防衛相は翌9月18日、救助ボート使用が市民の抗議でできなかったことに「こういう結果になってしまうと、次から非常に(米側との)交渉はやりづらくなる」と発言。「せっかく(嘉手納基地でのパラシュート降下訓練の回避を目的として)伊江島での訓練確保のために調達した船が使えない状態では、地元の思いと食い違うのでは」と市民の行動を批判した。さらなる基地機能強化を懸念する地元県民に対し責任転嫁する許しがたい暴言だ。

 玉城デニー知事は19日、「県は、パラシュート降下訓練はSACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告に基づいて伊江島で実施するよう求めているが、その訓練と民間港の使用は別問題」と河野防衛相の発言に不快感を示した。さらに「緊急時以外の民間港湾や空港の使用の自粛を要請している。その方向性は今までもこれからも変わらない」と米軍使用は緊急以外認めないことを明らかにした。

 米軍は21日の港使用は天候不良を理由に取りやめたが、10月中旬にも警備体制強化を図り港使用を検討するという情報もある。なおも緊迫した状況が続く。

国関与取り消し訴訟結審

 福岡高裁那覇支部で9月18日、辺野古新基地建設の国の関与取り消し訴訟の第1回口頭弁論が開かれた。

 玉城知事は就任後初めて出廷。意見陳述で「国の機関が私人になりすまし国民しか利用できない行政不服審査制度を用いた違法な関与に裁判所がお墨付きを与えることになれば、地方自治や法治国家に未来はない」と訴え、司法に対してくぎを刺した。

 大久保正道裁判長は、県側が求めた行政法学者の証人尋問など審理の続行要求を退け、わずか40分で即日結審とした。この訴訟指揮を見ても判決で主張が通ることは容易ではないが、県側も即日結審は予想していたという。判決は10月23日。仮に敗訴しても最高裁に上告し、闘い続ける。

 11月26日には、県の埋め立て承認撤回の処分を取り消した国交省の裁決そのものの違法性を争う抗告訴訟の第1回口頭弁論が那覇地裁で行われる。高裁、最高裁まで争えば、判決確定に1〜2年はかかると見込まれる。県は、沖縄防衛局から提出されるサンゴ移植申請や設計概要変更申請などの決裁も最高裁判決確定まで保留とする構えだ。

 さらに、米連邦議会で国防予算の大枠を決める2020年米会計年度の国防権限法案でのグアム移転検証問題をはじめ、軟弱地盤の改良工事をめぐる国の「技術検討委員会」メンバーの適正問題など、国会での追及課題も山積みだ。10〜11月、現場でも、司法でも、国会でも、正念場の闘いが続く。   (A)



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