2019年10月11日 1595号

【みるよむサナテレビ(532)/2019年9月28日配信:イラク市民に広がる無神論】

 イラクでは今、若者の間で無神論やマルクス主義、社会主義への関心が高まっている。2019年9月、サナテレビはバグダッド市民にインタビューを行った。

 中東ではイスラム教の影響力が強く、イスラム政治勢力が実権を握っている場合が多い。社会主義、共産主義は無神論であり、彼らにとって最大の脅威ととらえている。イラクでも同じだ。

 インタビューの最初に登場する政治家は「無神論だけではなく思想の自由全体に対するブルジョアジーの脅迫である」と批判する。資本主義社会の支配階級ブルジョアジーがその支配に利用しているのが宗教だ。

 次に登場する市民活動家も、「宗教というものは、苦しみの本当の原因を知り自分たちの境遇を革命によって解決する道から、民衆を引き離すために利用されている」と宗教の役割を指摘する。

 そして3番目に登場する若者はマルクスの言葉に模して「宗教は商品である」と非難する。「モスクが何百万ドルものお金を集めるだけでなく、宗教行事をとり行い、寄付金は聖地やモスクやイスラム法学者に与えられる」という実態は、宗教が違っていても欧米、日本でも見られるものだ。

 イスラム圏だけでなく、欧米であろうがロシアや中国であろうが資本の支配が貫徹し、その支配のために宗教が利用されているという点では、本質的に変わらないということに気が付かされる。トランプ米大統領のようなファシスト的極右排外主義者をキリスト教右派が支えている。日本でも宗教政党が安倍政権を支えている。

変革への展望

 若者は「世界中に社会主義革命が広がり、全世界が平和へと向かえば、人間を抑圧する人間はいなくなるでしょう」と明確な展望と確信を語る。イラクでは彼のように、不当な支配と格差が広がる社会に対して社会主義によって変革しようと考える若者が増えている。イラクの、そして世界の変革への展望が示されているのではないだろうか。

 イラクではグローバル資本の支配のもとで社会福祉は破壊され、大量の失業者が出ている。市民の不満を抑えるために政府はイスラム教による支配を強めている。サナテレビはそんなイラクの不公正な社会を変革する展望を求める市民の声を伝えている。

(イラク平和テレビ局/injapan代表・森文洋)



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