2019年10月18日 1596号

【10月 最低賃金が改定 時給901円では生活できない ただちに1500円 国際水準へ】

 10月1日から6日にかけて各都道府県最低賃金が改定された。最低賃金とは国が決める賃金時給の下限。使用者はその水準以上の賃金を労働者に支払う義務があり、従わなければ罰則が適用される。

 今回の改定による全国加重平均額は901円。これまでの874円からわずか27円の上昇にとどまった。地方15県が最低の790円、最高は東京の1013円と格差は開いたままだ。その東京の最低賃金でも、週40時間労働したとして月額17万9301円。都内の母子世帯(30歳、4歳、2歳)の生活保護支給額18万9870円にとどかない。

 2015〜17年に実施された最低生計費調査によれば、「ふつうの暮らし」に必要な費用(25歳男性、賃貸居住で試算)は税・保険料込みで月額約22万〜24万円。全国どこでも大きな差はなかった。これは最低賃金1500円実現で得られる賃金に相当する。

 安倍政権は、全国平均1000円を目標にしているが、これでワーキングプアの解消をすることは不可能だ。

世界中で引き上げ

 米下院は7月18日、連邦レベルの最低賃金を2025年までに段階的に時給15ドル(約1600円)に引き上げる「賃上げ法案」を可決した。ファストフード労働者が始めた「15ドルのための運動」は、大きな成果を獲得した。上院で多数の共和党もトランプ大統領も後ろ向きだが、民主党から大統領選出馬を表明したほとんどの候補は15ドルへの引き上げを掲げる。大統領選の大きな争点となる。

 スペインは、今年1月から最低賃金を22・3%引き上げた。緊縮政策が長く続いてきたが、21年ぶりの大幅引き上げで月額735・9ユーロ(約9万4000円)が900ユーロ(約11万5000円)に。250万人の労働者の賃金が底上げされた。

 この最賃引き上げは、社会労働党のサンチェス首相と、緊縮政策の転換を強く主張してきた左派連合「ウニドス・ポデモス」が昨年10月に合意し、予算編成方針に盛り込まれていたものだ。

 フランスの法定最低賃金も1月から時給10・03ユーロ(約1300円)に引き上げられた。併せて、低所得の就業者(自営を含む)を対象とする手当も増額された。

 英国労働党は、9月の大会で、ジョンソン政権と対決し総選挙で政権を奪還する政策を打ち出した。▽時給10ポンド(約1330円)の「実質生活賃金(25歳以上の被雇用者を対象とする法定最低賃金)」実現▽労働組合の権利の回復▽2030年までに週32時間労働実現▽無料の介護を提供する「国民介護サービス」の構築―を掲げ、財源は大企業や上位5%の富裕層に対する増税でまかなう。

 世界中で、ワーキングプアをなくすために最低賃金を引き上げる運動が前進している。

20年で日本だけ賃金低下

 ILO(国際労働機関)の最低賃金決定制度条約(第26号)では、制度決定にあたり関係労使団体との協議が必要とされ、日本も中央最低賃金審議会で公労使6名ずつの委員を選任している。

 しかし、6名の労働側委員は、連合か連合傘下労組の役員ばかり。最低賃金並で働く非正規労働者の代表ではなく、今回の改定の審議会でも790円の最低賃金を800円に、と主張しただけだ。時給1500円を切実に求めるコミュニティーユニオンなど非正規労働者の代表を審議会に参加させるとともに、社会的な最低賃金引き上げ運動にしなければならない。

 OECD(経済協力開発機構)が算定した民間部門時給額を2018年と1997年で比較すると、日本は8%の下落。主要国唯一のマイナスだ。一方、英国は93%、米国は82%、フランスは69%、ドイツは59%増加し、韓国は約2・7倍になっている。

 日本のグローバル企業は、目先の利益を増やすために賃金や原材料コストを引き下げ、政府に迫って大企業や富裕層の税負担を減らしてきた。一握りの大企業や富裕層は莫大な富を手にしたが、労働者や中小企業・農業従事者の所得は減り、経済全体の衰退が進んだ。この構図を根本的に転換することが必要だ。

 全国一律、だれでもどこでも最低賃金1500円実現はまったなしの要求だ。そのためにも、大企業・富裕層に増税し、1500円への引き上げを可能とする諸政策の財源を確保しなければならない。社会を変える最低賃金闘争を前進させよう。

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