2019年10月25日 1597号

【イラクと日本/市民のデモに発砲 死者500人以上/イラク・日本両政府に抗議を】

 イラクでは10月初頭から政府の汚職や失業に抗議する市民デモが全土に広がっている。

 グローバル資本の利益しか考えない歴代イラク政府は、国営企業を閉鎖し、膨大な失業者を生み出している。若者の失業率は25%以上だ。2003年の米軍占領から16年を経ても、バグダッドでさえ電気や水道が使えない地域が多数ある。医療、福祉、教育も切り捨てられている。一方で政治家らは石油利権汚職で大儲けをしている。市民はこれまでも怒りの声を上げてきた。

街頭は戦場のよう

 ところが、アブドルマハディ政権は今回のデモに対し、バグダッドや中部カルバラ、南部のナシリヤ、バスラなど全国各地に治安部隊や宗派の私兵を送り込んだ。彼らは市民のデモに発砲。多数の死者、負傷者を出し、大量逮捕を続けている。しかも政府が衛星放送やインターネットの通信を遮断、情報の拡散を妨害したために、この蛮行について知りうることは非常に少ない。

 イラクの市民放送局サナテレビによると、治安部隊による発砲で10月初めの1週間で500人以上(政府発表は150人)が死亡し、1千人が負傷した。逮捕者は6千人以上にのぼる。デモ参加者の自宅を襲撃し射殺、誘拐する事件も続発している。

 街頭はまさに戦争状態だ。イラク労働者共産党は「言葉のあらゆる意味でイラクは戦場の最前線にいるかのようだ」と政権を糾弾する。

 アブドルマハディ政権は米軍の配備縮小、イラン・シーア派イスラム主義勢力の台頭の中、民衆の怒りで支配体制が揺さぶられることを恐れ、流血の弾圧に踏み出したのだ。

世界から弾圧やめよ

 この弾圧に反対し、イラク国内外の市民が立ち上がっている。イラク労働者共産党は、政府に対して治安部隊や宗派の私兵の暴力を停止させ、デモと意見表明の自由を認めろと要求している。世界の人権団体、労働組合、民主勢力に「イラク政府とその私兵による大虐殺を糾弾する。民衆の自宅への攻撃と無差別殺害を止めよう」と呼びかけている。

 すでに、ロンドンやストックホルムのイラク大使館前では「市民を攻撃するな、逮捕をするな、アブドルマハディ政権退陣」を掲げたデモや集会が展開されている。

 歴代自民党政権は、石油利権確保のためにイラク政府に数千億円のODA(政府開発援助)を提供してきた。この構造がアブドルマハディ政権を支えているのだ。日本からもアブドルマハディ政権に抗議し、暴力停止を要求する声を集中しよう。安倍政権にイラク政府へのODA即時停止を要求しよう。

《抗議先》
◆イラク大使館 FAX03-5790-5315 TEL 03-5790-5311
◆外務省 TEL03-3580-3311
 https://www3.mofa.go.jp/mofaj/mail/qa.html

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