2019年10月25日 1597号

【気候変動は非常事態/グローバル資本の規制を】

 7月23日、国連本部(ニューヨーク)で気候行動サミットが開かれた。

 温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」(2015年)は、(1)産業革命前と比べた世界平均気温の上昇を2度未満に抑え、1・5度未満を目指す(2)すべての国が温室効果ガス排出の自主的な削減目標を策定し、国連に提出する―などを決めた。だが、締約国が示す現在の削減目標では平均気温は3度上昇する。

760万人の気候マーチ

 サミットでは16歳の環境活動家グレタ・トゥーンべリさんが演説。全世界で760万人以上が参加した「グローバル気候マーチ」をけん引した若者世代を代表し、「人々は困窮し、死にひんし、生態系は壊れる。私たちは絶滅を前にしている。なのに、あなたがたはお金と、永続的経済成長という『おとぎ話』を語っている。よくもそんなことができる」と各国の無策に怒りをあらわにした。

 サミットを開催したグテーレス国連事務総長は2050年に温室効果ガス実質排出ゼロ、これに向けて30年の各国の削減目標を20年までに更新すること、石炭火力発電所閉鎖の加速と20年以降の新設取りやめを事前に求めていた。

 サミットでは77か国が「50年に温室効果ガス実質排出ゼロを目指す」と表明。温暖化を先進国と途上国の格差としてとらえる気候正義♂^動などに押された英・仏・独首脳も同調した。

 一方、主要排出国トップ5のうち中国は従来の目標並み、日本は発言の機会さえ与えられなかった。脱退を表明した米国も含め、グローバル資本主義に侵されている国々は、温暖化対策に背を向けている。



 グローバル資本の経済活動は全世界に及ぶ。利益を上げるのは資源産業、製造業、アグリビジネス、総合商社など輸出入で利益を上げる企業だ。

 安価な労働力・固定資産、租税回避、緩い規制、時には現地政府に規制緩和を押し付けてでも経済効率=利潤拡大を追求する。大量に採掘・製造・栽培・飼育し世界中に輸送する。自動車は、完成車の輸出のみならず、現地生産であってもわざわざ部品を輸出して組み立てる。

 グローバル資本は市民生活の隅々まで侵している。身近な例では、大手スーパー店頭の鶏肉。100g40円弱で売るためにはるばる地球の裏側から運んでくる。ブラジルの日本向け鶏肉輸出は鉄鉱石に次ぐ第2位だ。そのブラジルは、森林を伐採し野焼きすることで牧草地など農地を広げ、畜産物輸出を増やしてきた。その影響とみられるアマゾンの森林火災で今年になって8月までに九州の面積に匹敵する4万3400平方キロメートルが消失した。このような火災は2000年代前半をピークに毎年続いている。

 ホームセンターには、北米産の材木が安価で並ぶ一方で、国内林業は衰退の一途。荒れた山は大雨のたびに被害を拡大する。行楽シーズンともなれば東南アジアのマングローブ炭が並び、伐採跡はエビの養殖場となりアグリビジネスが巣食う。

 土中からCO2の排出源である石油石炭をわざわざ掘り出して、世界中に物流網を張り巡らせてCO2をまき散らし、吸収源である森林を焼失させる。グローバル資本の経済活動は矛盾だらけだ。

 その矛盾に目をつぶるのがグローバル資本主義国の政府だ。オイルメジャーや石炭産業が大きな後ろ盾となっているトランプはパリ協定を離脱する。ブラジル・ボルソナーロ大統領は、アマゾン火災対策へのフランスからの支援を断る。エネルギー基本計画で再生エネルギーよりも石炭火力に重きを置く安倍政権は、石炭発電の輸出・国内新設をもくろむ電力業界、大量のコークスを燃やす製鉄業界などグローバル資本による経済成長しか眼中にない。

環境破壊の資本にNO

 日本では、昨年の西日本豪雨と夏の熱波、今年の台風15号、19号と甚大な被害と市民の犠牲が広がり、テレビの呼びかけは「ただちに命を守る行動を」から「少しでも命が助かる可能性の高い行動を」に変化した。もはや、命にかかわる「非常事態」だ。世界で気候非常事態を宣言した国は18か国970自治体に上る(8/28毎日)。日本でも長崎県壱岐市が日本初の気候非常事態宣言を決議し(9月)、神奈川県鎌倉市も続いた。

 グローバル資本は人権・環境破壊抜きに経済活動を維持できない。これをを規制しなければ、人類の存続は危うい。

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