2019年10月25日 1597号

【みる…よむ…サナテレビ(534)/2019年10月12日配信 イラク平和テレビ局in Japan/バグダッド市当局に追い出される住民たち】

 イラクのバグダッド市当局は、「不法居住」を口実に住民の強制退去を強行した。しかし「不法居住者」とされる人びとは追い出されれば住む場所がない。2019年8月、サナテレビはこの問題について市民にインタビューした。

 サナテレビのコメンテーターによると、アブドルマハディ政権は「優先課題とみなす人権と権利擁護を推進する」と公言しているという。しかし、最初の場面を見ていただきたい。政府はまさに権力を使って貧しい住民の住居を破壊し、追い出している。このどこが市民の権利擁護だろうか。

 一人目の弁護士は「行政当局は市民の利益に尽くさなければなりません」と当然のことを指摘する。ところが現実はどうか。彼は「イラクにある法律は、市民に尽くすのではなく政治家に尽くす」と断言する。そもそも法律自体が市民の人権を守っていないのだ。

 そんな中で多くの市民が「不法居住者」とされ、住む家が強制撤去されている。弁護士は「強制撤去するなら、政府は代わりの住居を提供しなければなりません」と主張する。だが、アブドルマハディ政権が住民に差し向けたのはブルドーザーだ。行き場がなく困窮した市民に対し血も涙もない仕打ちで追い出す当局。「こんな行為は市民に対して不公正で目に余るひどさです」との怒りが伝わる。

 弁護士は「追い出された市民にどこに行けと言うのですか。砂漠の中で寝ろと言うのですか」と強く憤る。そして「市民は立ち上がって、『膨大な人数の貧困者に対する追い出し行為をするな』と警告しなければなりません」と訴える。

 2番目に登場する弁護士は「地域には何万人もの非合法の居住者がいる」と実態を伝える。「バグダッドだけでも1000人の『不法』居住者の地域」があり、全体では少なくとも3000人、約500家族に及ぶ。

 彼は「政府の方がこの人たちの住む場所を見つけるべき。民主国家だと自称している国でこんなことが起きてはなりません」と強調する。日本の私たちも共感できる訴えだ。

 イラクで増大する「不法居住者」は、失業と貧困を押し付け社会サービスを崩壊させた政府が生み出したものだ。サナテレビはこうした実態を明らかにし、失業と貧困を生み出す政治を変革しようと呼びかける。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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