2019年11月01日 1598号

【みるよむ(535)2019年10月19日配信 イラク平和テレビ局in Japan/真夏のイラクでなぜ電気が来ない?!】

 イラクでは、日本よりはるかに暑い真夏に電気の供給が止まり冷房が使えない事態が続いた。発電用の石油は十分にあるにもかかわらず、なぜこのようなことが起こるのか。2019年8月、サナテレビはバグダッド市民にインタビューを行った。

 最初に登場する市民活動家は「イラクの夏は気温が摂氏50度にもなる」と言う。ところが、1日2〜3時間しか発電所が稼働しない地域もあり、電力供給が止まるときもある。電気が来ずエアコンがストップしたらどうなるか。それは、もはや市民に対する殺人同様の仕打ちだ。活動家は「私は、これは人間の存在を終わらせたい連中の市民に対する戦争だと思う」とまで怒りをあらわにする。市民が頻繁に抗議デモを展開する事態もうなずける。

 さらに「世界には政府と議会がない国は存在しないのに、生きる権利がない国がある」とイラク政府を厳しく批判する。「貧しい市民は電気もなく、パンを手に入れることもできず、議会に要請しても何も解決しない。裁判所に行っても解決できない。抗議行動をしたら治安部隊に逮捕される」と現実を告発する。

電力に巣くう汚職と腐敗

 2人目の市民活動家は「この15年間に400億j〜450億j(約4兆2億千円〜4兆7千億円)もの資金を電力開発に投入したが、市民に電気が来ないのは汚職が起こっているから」と指摘している。

 3人目の市民活動家は、電力省の役人が汚職で電力利権を食い物にしている実態を批判する。

 発電所からの電力がまともに来ないことで、地元業者が小さな発電機を稼働させ電気を売りつけることがよくある。ところが、「その電力料金は、政府は1アンペア1万2千ディナール(約1100円)とするが、業者は2万5千ディナール(約2300円)を受け取る」と言う。市民は2倍もの高い電気料金を払わされている。

 何兆円もの電力開発投資が汚職で横取りされ、一方で電力省職員と小規模発電機の業者が癒着して2倍もの高い価格で電気を売りつける。イラク社会は構造的腐敗体制下にある。サナテレビはこの腐敗した政治を変えようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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