2019年11月15日 1600号

【なかまユニオン10倍化へ 韓国・希望連帯労組の組織化に学ぶ 人と組織を残す 団結まつり・前夜祭】

 「なかまユニオンは今、大きな転換点に立っている」。こう語るのは、執行委員長の井手窪啓一さん。昨年、結成20周年を迎えたなかまユニオンは、社会を変える力をつけるために10年後に組合員を10倍化して3千人のなかまユニオンをつくろうという目標を、7月定期大会で確認した。

 その目標実現に向けたステップとして11月3日、「労働組合をどう作るか〜希望連帯労組の組織化に学ぶ〜」と題し、「団結まつり前夜祭企画・日韓交流会」を行った。

 韓国労働情勢と方針について希望連帯労組チェ・オス組織局長が、組合の組織化についてソン・ヨンスク事務局長が報告した。

 韓国では、文在寅(ムンジェイン)大統領が候補時に掲げていた公共部門の正規職転換政策や特殊雇用・委託雇用の防止が弱められ、放置されている。この反労働、財閥優先の文在寅政府に対し、民主労総は(1)労働基本権を勝ち取り労働法改悪阻止(2)非正規職の撤廃(3)社会安全網の公共性拡大(4)財閥改革及び雇用中心の産業政策の獲得を掲げ、ゼネストを行い全力で闘っていくという。

人・地域と希望連帯労組

 組織化に関しては、「未組織からの組織化の特徴」と「希望連帯労組の組織化の方向と原則」が語られた。

 とりわけ、「希望連帯労組の組織化の方向と原則」は、(1)過半数以上を組織化する原則(2)組織闘争の中で最も重要な目標―人と組織を残す(3)社会連帯―地域連携から生まれる社会的な力(4)「下に向かう運動」と「共に生きる人生」の4点。その方針の下、組合結成10年で約6千人の組合員を擁する労働組合に成長した。

 「社会連帯―地域連携」とは何か。

 日本と韓国で大きく違うのが、資本も資金を拠出する「社会貢献事業基金」の制度だ。希望連帯労組は2011年以降、団体交渉で資本から総額10億5千万ウォン(約1億1千万円)を「社会貢献基金への拠出」として獲得。その資金で児童青少年支援に取り組んできた。また、2013年1月、地域の労働社会団体と「ケーブル放送の公共性と非正規職労働者の労働人権保障のための共同対策委員会」を構成して、労働争議の闘いを有利に進めた。これらが社会連帯―地域連携の例だ。

 さらに希望連帯労組は、団体協約を通じて企業の社会貢献事業基金の一部を、組合の社会連帯基金として勝ち取ることにも成功している。

 第4原則の「下に向かう運動」「共に生きる人生」とは、どのような内容か。

 ここにも、この「社会貢献事業基金」が活用されている。労働者が持っているものは少ないが、さらに苦しい人たちと共に生きるために、4年前に社団法人「希望の種」を創り、韓国に移住労働者として働いていたネパール人労働者たちが帰国し設立した団体やネパール労総と一緒に支援する事業などを進めている。

なかまユニオンの飛躍へ

 第2原則「人と組織を残す」の中の「多数の組織化、または組織を維持強化しなければならない」という方針は、希望連帯労組としても最も力を注いでいる点だ。チェ・オスさんからは、韓国では「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」という古い言葉があることが紹介され、多数の組織化の意義が強調された。

 報告・質疑を受け、井手窪委員長は「希望連帯労組がいかに人を大切にする組織であるかということ、人や地域を大事にする世界観で運動をやっていることに、改めて学ばされた」と全体をまとめた。

 井手窪さんは、希望連帯労組の組織化の原則に触れ、「日本では、団体交渉が韓国よりも法的に容易な状況にある。交渉を行ったり争議を闘って勝利しても、それぞれの職場で働き続けられない(負けている)限り、決して資本に勝つことはできないし、社会を変えることもできない。ドイツでの産別労組の闘いも現在、個々の職場での闘いへ力点が移ってきている。日本におけるコミュニティ・ユニオンの闘い方についても認識を新たにした」と語る。

 なかまユニオンは、労働相談や争議を闘う中で人と組織を残し、さらに個々の職場において労働者の過半数を獲得していくことをめざす。





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