2019年11月15日 1600号

【ドクター林のなんでも診察室 安倍政権発の不要・高価・有害薬ゾフルーザ】

 10月17日、NHKと朝日新聞などがゾフルーザという抗インフルエンザ薬(以下、抗イ薬)に関し、12歳未満に処方するのは慎重に検討すべき、との日本感染症学会の提言を報道しました。この薬は米国でも認可されましたが、12歳以上だけです。

 この薬はマスコミに大宣伝され、販売2年目にして抗イ薬の売り上げトップになりました。タミフルなど抗イ薬を世界の8割も使い、今度はゾフルーザに飛びついたのが日本の医師です。私たち医問研の要望に反し、タミフル、リレンザを強引に推奨した日本感染症学会が「慎重に」と言うのですからよほどのことです。

 この薬の特徴を見ます。効果は、咳などをひっくるめた諸症状を1日ほど、発熱を半日ほど短くし、タミフルと同様です。

 さらに、この薬、効かなくなってくる(耐性)比率が異常に高いのです。耐性ウイルスが他の人に感染するとますます効果がなくなります。副作用として出血が昨年度は25人報告され、うち3人が死亡しています。その他の副作用もまだまだ不明です。にもかかわらず、薬価はタミフルのジェネリックの3・5倍、4789円です。

 ゾフルーザの「良い」ところといえば、タミフルは5日間飲みますがこちらは1回飲むだけ。これが唯一です。それだけで耐性、副作用や価格にもかかわらず、日本の医師はこの新薬に飛びついたのです。ただ、タミフルと違い大学教授などから多くの批判があり、それが冒頭の提言につながったのでしょう。

 そもそも、タミフルなど抗イ薬は必要ないのです。WHO(世界保健機関)は特別な重症以外は不要、日本小児科学会も普通は不要としています。ですから、ゾフルーザだけでも約300億円の浪費です。

 実は、安倍内閣が製薬企業の利益のために世界に先駆けて不要な薬でも早すぎる販売を承認していることは以前も述べました。その例がこのゾフルーザです。これまでの薬は、認可の申請から承認まで何年かかかりましたが、ゾフルーザはたった4か月間で、多くの審議が省かれ、それらが先述の問題点としても現れているのです。製造販売は塩野義製薬ですが、日本と台湾以外は製薬世界トップのロシュ社が販売するためか、8か月遅れで米国でも承認されました。巨大製薬業界は日本を突破口に、次に米国、そして世界に効かない薬の認可を広げようとしているのです。

 DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)の政策の柱であるメディケア・フォー・オール(国民皆保険)は、米国医療を支配する巨大企業に、病院、介護、保険と共に製薬を上げています。インフルエンザでのゾフルーザのような不要な「薬」の排除もDSAとの連帯事項です。

    (筆者は、小児科医)
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