2019年11月22日 1601号

【ミリタリーウォッチング 軍規律のゆるみで事故? 人間が壊れつつある】

 ここしばらく、沖縄の新聞はもちろん、メディアが「米軍の異常行動」について次々にとりあげている。

合意違反 報告もなし

 10月31日付け沖縄タイムスは、伊江島補助飛行場のパラシュート降下訓練で兵士が基地外に着地する危険な行動が2日連続で起きていると報道。また、原則禁止である嘉手納基地での降下訓練が今年4回目となり、謝花副知事が沖縄防衛局長に抗議したことを報じた。「伊江島での基地外着地」も「嘉手納での降下訓練」も、日米政府間のSACO(日米合同委員会)合意他のとりきめに反する行動を米軍が平気で繰り返す異常事態となっている。

 11月に入り、今度は全国メディアで2つの重大接触事故の米軍報告書が伝えられた。2016年4月、米海兵隊岩国基地所属の戦闘機が嘉手納基地沖上空で空中給油機と接触し、給油ホースを引きちぎった事件(事実を公表もせず正式な調査もしなかったことが判明)。そして2年後の2018年12月、高知県沖で同様の墜落事故が発生。6人が死亡・行方不明となっている。ともに戦闘機はFA18、空中給油機はKC130の事故だ。

 どちらも原因については、事故機の構造的欠陥の究明は避け、戦闘機パイロットが機体の高度や方向を正しく認識できなくなる「空間識失調の状態」にあったと個人責任にされている。

 報告書は同時に、背景として部隊内に「薬物乱用、アルコールの過剰摂取、不倫、指示違反といった職業倫理にもとる実例」が存在と指摘した(11/3毎日)。パイロットの手放し操縦やフライト中の読書、睡眠剤など薬物の乱用、機内での自撮りなど、規律の緩みが事故につながったと米軍は強調する。だが、なぜパイロットが自らの命を危険にさらす薬物使用にまで至っているのかには触れない。

イタリアの大惨事

 21年前の1998年、米軍岩国海兵隊のEA6Bプラウラ―(電子戦機)がイタリアのアビアノ基地を拠点に低空飛行訓練を重ねていた。2月、この電子戦機がスキー場ゴンドラのケーブルに衝突・切断する大事故を引き起こした。20人のスキー客が乗ったゴンドラは100b以上落下し、全員が死亡。ゲレンデは血に染まった。軍法会議でパイロットは「スキー場があることを知らなかった。航空図にも記載されていなかった」と主張し、最終的には何と無罪評決だった。

 後日、この電子戦機乗組員の何人かは、いつも「誰が、一番低く飛べるか」を競い、「ビールを賭けて低空飛行訓練を行っていた」と語っていたという。

いつ日本でも

 これは現在の日本の状況とも共通するのではないか。沖縄だけでなく、米軍も自衛隊も近年頻繁に事件・事故を引き起こしている。あらゆる基地周辺で事故が続発している事態をみれば、イタリア同様の大惨事がいつ起きてもおかしくない。

 軍の「規律」が緩んでいるというよりも、軍隊に身を置く人間自体が壊れつつあると思う。ものを破壊し、人を殺戮することが評価される軍隊にあって、心身ともに健全でいられる方が不思議と言える。

 安倍政権は再び中東への自衛隊派兵に動き出した。これまで以上の激しい訓練で、軍の非人間的行動はますます日常的なものとなる。これを止める平和の力を私たちは創りだそう。

藤田 なぎ
平和と生活をむすぶ会



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