2019年11月22日 1601号

【辺野古新基地建設を断念し 首里城再建にこそ予算を 米軍異常行動の元凶は戦争準備激化】

 沖縄のシンボル首里城が焼失した。10月30日未明、那覇市内のホテルにいた私は消防車が走り回る音に眼が覚めたが、首里城炎上を知ったのは朝のニュースだった。その日から沖縄は深い悲しみに沈んでいる。翁長前知事が亡くなったときと同じ様な喪失感が広がっている。と同時に再建に向けた県民の力強い胎動も感じられる。

 韓国を訪れていた玉城デニー知事は、すぐに沖縄に戻り、その足で上京。政府に対し首里城再建の要請に動いた。

 菅義偉官房長官は火災当日に「政府として全力で取り組む」と表明し、新聞では「辺野古新基地建設を巡る政治的対立は封印」(11/1沖縄タイムス)という表現まで表れた。玉城知事が辺野古新基地建設を容認することはあり得ないが、甚大な台風被害救済にもなかなか動かない政府がすぐに費用負担への協力を申し出るところなどどうも胡散(うさん)臭い。衛藤晟一沖縄担当相は11月5日の会見で「国の責任で再建」と述べた。

 安倍政権が基地建設のためにはなりふり構わぬ今、政府や基地関連企業の資金拠出や寄付には別の意図を疑わないわけにはいかない。

 例えば、辺野古への土砂搬出を強行する琉球セメント。9月、沖縄県の「沖縄子どもの未来県民会議」に500万円を寄付。琉球新報の「りゅうちゃん子どもの希望募金」に50万円、本部町などの自治体や企業にのべ1670万円を寄付した。同社は、営業許可なしの岩ズリ販売疑惑や13社対象の入札を1社だけで落札した官製談合など数多くの疑惑が指摘され、赤土を岩ズリと称して埋め立て土砂に使用するなど、挙げればきりがない悪徳企業だ。辺野古埋め立てですでに数億円の利益を上げているとされる。

 元々の親会社は、安倍首相の甥が長く勤めていた一族関連企業、山口県の宇部興産だ。辺野古埋め立てで儲けた金で沖縄の子どもたちの貧困救済に、と言われても、手放しで喜べるものではない。

県民意識の懐柔

 辺野古新基地建設反対が圧倒的な県民世論を切り崩すために、政府はさまざまな手を使って県民意識を取り込もうと狙っている。

 その一つが吉本興業を使った若者の獲得策動だ。吉本は那覇市内の「よしもと沖縄花月」、訓練生練習場を拠点に、10年前からは「沖縄国際映画祭」を開催。芸人や有名俳優を沖縄に呼び込み、国際通りの特設会場には多くの若者が殺到した。沖縄出身の漫才コンビ「ガレッジセール」の通称ゴリこと照屋年之が監督した映画『洗骨』は、今年沖縄で大ヒットした。吉本は若者だけでなく、全世代を照準に沖縄に触手を伸ばしている。

 大崎洋吉本興業会長は、内閣府設置の「基地跡地の未来に関する懇談会」委員にもなり、沖縄の基地問題に関わり基地跡地からのおこぼれを頂戴しようとしている。安倍は、官邸や花見会に芸人を招請するなど吉本興業とは蜜月関係で、ワイドショーなどで吉本芸人が安倍擁護の世論誘導を担っていることは周知の事実だ。世論調査でも高齢者は安倍政権に容易に従わないが、次世代の若者をはじめ各世代を取り込もうとあらゆる策を使っている。

 首里城再建は県民の強い願いだ。だが、政府と企業がすぐさま支援や協力に動き出したことに危惧を感じる県民は多い。再建費用負担を利用した政府による沖縄懐柔の策略に注意を払う必要がある。

 辺野古新基地に必要な2兆5500億円の1%で260億円と言われる首里城再建は費用面ではすぐにも可能となる。政府は、県民の民意に従って辺野古を断念し首里城再建にこそ予算をまわすべきだ。

連日の事件・事故

 米軍兵士の行動が異常だ。

 嘉手納基地のパラシュート降下訓練の伊江島移転(2007年日米合意)にもかかわらず、嘉手納での訓練が日常化している。伊江島の訓練でも区域外にパラシュートが連続落下。米空軍機MC130J特殊訓練機の部品が落下し、米兵の飲酒暴行も続発する。復帰前を彷彿(ほうふつ)させる事件が連日発生している。たまりかねた謝花喜一郎副知事は外務省沖縄大使と沖縄防衛局長を呼び出し、厳重に抗議した。

 一方、岩国の米軍基地では、F18戦闘機の海兵隊員が飛行中に手放しで読書する場面をスマホで自撮りというとんでもない実態まで発覚した。

 これほどの事件・事故の続発は尋常ではない。2003年イラク戦争の時も、現地に直行する沖縄海兵隊ら米兵は荒れた。今トランプ政権の下、対イラン有志連合など中東での戦闘を意識した訓練激化が原因ともいわれる。人殺しのための軍隊・基地はいらない。人格を破壊する訓練を行う軍隊も基地も、全世界から無くさなければならない。 (N) 



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