2019年12月06日 1603号

【桜を見る会 税金で支持固め/「応援した代議士がトップとってよかった」?/安倍の国家私物化を象徴】

 憲政史上最長の在職期間を記録した安倍晋三首相は強烈な腐敗臭を放っている。首相主催の「桜を見る会」、安倍後援会主催の「前夜祭」は税金による支援者接待の場だった。安倍のウソとごまかし、「お友達」政治を象徴するものであり、国家を私物化する犯罪行為だ。決して「些末な問題」などではない。

総裁選にも利用

 首相主催の桜を見る会。第2次安倍政権では2013年から7回開かれている。参加者は毎年増え続け、13年の1万4千人から19年は1万8千人余、過去最高となった。「各界功労者の慰労」を名目としながら、首相を含む自民党関係者に約8千人の推薦枠があった。発送された招待状1万5400通の過半を占める。この推薦枠はどう利用されたのか。

 例えば今年19年。7月の参院選をにらみ、改選議員に招待枠があてがわれた。露骨な集票活動、支持固めだった。18年は自民党の地方議員が大量に招待されている。発送された招待状は今年より500通も多い過去最高の1万5900通にのぼる。9月の自民党総裁選にむけた安倍の3選工作だった。「党総裁選を意識した地方の『党員票』対策の一環なんだな」との自民党関係者の声が報じられている(18年5月4日読売)。

 内閣府が推薦者名簿の保存期限を1年未満にしたのは18年4月だったという。他省庁が数年の保存をしているにもかかわらずだ。あまりに露骨過ぎて、置いておけなくなったからとしか考えられない。今年の推薦者名簿は共産党議員から資料請求があった5月9日に処分したという。内閣府大塚幸寛官房長は、「シュレッダー待ちだった」と言い訳し「首相枠の名簿はない」と言い切った。証拠隠滅であることを疑う余地はない。

 安倍のための桜を見る会だったことは明白だ。招待者の中には安倍昭恵首相夫人の推薦者も。昭恵が通った聖心学園の同窓生や友人、昭恵が校長を務める講座制スクール「UZUの学校」卒業生などなど。他にも、人寄せパンダよろしく安倍を持ち上げる芸能人、右派言論人。あげればきりがない。

 共産党田村智子議員の質問(11/8)に安倍は「(招待者選定に)関与していない」と一度はとぼけながら、次々と明らかになる事実を前に「意見は言った」と修正、反省の姿勢を見せた。菅義偉官房長官は13日、来年の桜を見る会の中止を発表。早く火消ししなければ火だるまになるとの判断だろう。だが、安倍の支持固めのために5千万円以上の税金が費やされた事実は消えない。

火消し工作に奔走

 桜を見る会とセットになった前夜祭の会費問題は安倍の腐臭が際立つところだ。「通常一人1万1千円以上の料金。値引きはしない」とホテル側の情報がいち早く流れた。「最低でも総額1千万円」(週刊文春11/28号)のところを5千円の会費(800人で4百万円)では足りない。

 安倍は「会費5千円はホテルの設定」「会費徴収を代行しただけ」「明細書はない」と強弁している。だが「前夜祭」はホテル主催ではない。ホテルとの契約は主催者の安倍事務所以外にありえない。

 安倍はこの無茶な説明に口裏を合わせるようにホテル関係者と打ち合わせた。国会での質問から3日後の11日、会場のニューオータニ取締役で経団連名誉会長の今井敬と会食している。19日にも2回目の会食をもった。その間の15日には、ホテルの広報部長ら2人を議員会館の安倍事務所に呼び出し、「『会費5千円』ということが厳重に確認された」(同)。安倍がぶら下がり会見を2回も設定したのは、この「確認」をした日だった。

 政治資金規正法は、「政治活動は国民の不断の監視と批判の下に行われるよう」、政治団体にすべての収支の記載を義務づけている。安倍後援会が主催した前夜祭はあきらかな政治活動だ。「会費徴収しただけ。収支がないから記録もない」などとの言い訳が通用するわけがない。


腐敗の極致

 安倍は、マスコミ対策も忘れていない。15日にフジサンケイグループ日枝久(ひえだひさし)代表、18日は読売新聞東京本社柴田岳論説委員、田中隆之編集局長、20日は内閣記者会加盟各社のキャップと会食を重ねた。そして21日には、櫻井よしこ、百田尚樹らと会食。安倍応援団言論人にまで援軍を頼んでいる。

 安倍応援団の論調は、「民主党政権もやっていた」「もっと大事なことがあるだろう」と論点をずらし、ごまかすことだ。少しは罪の意識が残っているのならまだしも、中には、何が悪いと開き直る者がいる。

 桜を見る会、前夜祭に毎年参加している山口県下関市の前田晋太郎市長はこう言う。「何十年も応援した代議士がトップを取って、招待状が届いて、応援してよかったなって、いいじゃないですか」。安倍の秘書だった前田。税金を安倍の保身のために使うことに罪悪感など少しも感じていないのだ。

 露骨な利益誘導も恥じないのは安倍政治の特徴だ。森友学園国有地たたき売り事件、加計学園「腹心の友」便宜供与事件など。今回の桜を見る会でも、飲食物提供業務を7年連続して請け負う外食・宅配業者「ジェーシー・コムサ」の取締役は安倍夫妻と親しい仲だった(11/22毎日)。

 前夜祭で「出血サービス」したニューオータニへは税金で補填された可能性がある。安倍は天皇即位にかかる首相夫妻主催の晩餐会(10/23)の会場を1月の段階で、入札をせずにここに決めていた。約600人で1億7200万円の支払いが約束されていた。

   *  *  *

 憲政史上最長となった安倍政権がなしたことは何か。教育基本法や労働法制の改悪、戦争法、共謀罪の強行。そして露骨な利益誘導であっても「公文書、データ改ざん、破棄」を進んで行う忖度官僚の育成。どれもこれも国家を私物化している証し、民主主義の破壊ではないか。

 こうした安倍政治を総集約した醜悪な姿が桜を見る会事件なのである。

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