2019年12月06日 1603号

【教員 変形労働時間制 衆院強行 糾弾 給特法は廃止だ 人員増こそ】

ほとんど審議なく可決

 政府は「教職員給与特別措置法」(給特法)改定案を今臨時国会に提出し、衆院はほとんど審議もせずに11月19日、自公与党と日本維新の会の賛成で可決し参院へ送った。

 この改定案は、教員に1年間単位の変形労働時間制を導入し、学期中を「繁忙期」として勤務時間の上限を引き上げ、夏休み期間中などに休日をまとめて取得させるもので、各自治体の条例化で2021年4月から導入できるとする。

 そもそも「給特法」は、教育労働者に対する労働基準法適用除外とともに、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」ことを法定化し、「残業代」に代わって基本給の4%に相当する「教職調整額」を毎月支給することを基本設計としていた。だが、この制度が導入された時代と現在の現場の実態は全くかけ離れたものになっている。

 文科省の16年度調査でも「中学校教員の約6割、小学校教員の約3割の残業時間が、おおむね月80時間超が目安の『過労死ライン』を超えていた」という実態だ。一方、総務省の地方公務員給与実態調査(16年)で、小中学校教員の平均月給は約36万円。「教職調整額」4%は約1万4千円にすぎない。これを想定した月の時間外勤務時間数80時間で割ると、残業1時間あたり200円弱と最低賃金も大幅に下回る事実上の「残業代ゼロ」で働かせ放題だ。こうした実態を抜本的に改善することこそ問われている。

 労基法で残業代の割増を法定化しているのは、雇用主の負担を大きくすることで残業を抑制させるため。労基法の適用を除外し、法定の最低賃金基準さえ下回る「教職調整額」で済ませてきたことが、「15年度にうつ病などの精神疾患で休職した公立学校の教員は5009人(文科省調査)と、00年度(2262人)から倍増」の状況を生み出している原因だ。責任は政府・文科省の不作為にある。


現場無視の導入策動

 労基法上、1年変形労働制の導入には、対象期間の労働日数、1週間・1日の労働時間数、連続して労働させることのできる日数の限度が決められており、会社は労使で36(サブロク)協定を締結し、所轄の労働基準監督署への届出が必要となる。教員への変形労働時間制導入はこうした手続きさえ抜きにすべてを条例でひとくくりにする現場無視の制度で、ILO(国際労働機関)「教員の地位に関する勧告」にも反する。

 公立学校の勤務時間は自治体の条例・規則で決まり、8時15分〜16時45分(7時間45分の勤務時間+45分の休憩時間)が通例だ。変形労働が導入されると、「繁忙期」は終業時刻が19時前後まで(最大10時間+1時間)となる可能性があり、夕方遅い時間に会議なども設定されてしまう。

 変形労働時間制を定めた労働基準法施行規則では、育児・介護を行う者など特別の配慮を要する者に必要な時間を確保できるような配慮が必要と定める。中央教育審議会答申も、こうした配慮が必要な教員には1年単位の変形労働時間制を適用しない選択ができる措置を求めている。また、1年単位の変形労働時間制には「1か月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないこと」「労働時間の限度は1日につき10時間まで、1週間につき52時間まで (対象期間が3か月を超える場合は、48時間を超える週は3か月で3回まで)という条件が必要」とされる。

 すでに現状でも、非常勤職員などが多く、様々な勤務形態の教職員が存在する。年齢構成から育児や介護で配慮が必要な教職員も多くなっている中で、管理職が「勤務の割振り」を作成することは実質不可能で、各自治体で条例を作っても学校現場での混乱と破綻は明らかだ。

ILO地位勧告守れ

 給特法改悪の今国会での強行を断念させ、過労死水準の長時間労働実態を抜本的に改善することが必要だ。

 その際、ILO教員の地位に関する勧告82項「教員の給与及び勤務条件は、教員団体と教員の使用者との間の交渉の過程を経て決定されるものとする」、同89項「教員の1日及び1週あたりの勤務時間は、教員団体と協議の上定めるものとする」が遵守されなければならない。

 根本的には、現行の給特法を廃止し、教育労働者に労働基準法を適用することで残業代を支給させ、長時間労働を抑制するための規制を強化すること、その実現のための正規教員の人員増こそが必要だ。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS